2011-05-31

子どもおかあさんの心の傷 [NPR]


Original Title: Lexi's Saga: A Lost Childhood Leaves Emotional Scars

近親者からネグレクトされた7才の女の子が、ひとの世話をすることで自分の存在意義を見いだした話。

レクシという女の子は、物心ついた時から2人の弟たちの面倒を見て来た。現在、姉弟は養父母とともに"普通の"家庭で暮らしているが、レクシは今も弟たちの面倒を見なければならないし、養父母に対しても同様に世話をしなければならない、という強迫観念を抱いている。例えば、リンゴが3つあると、自分たち5人家族に一つずつ行き渡らないからとパニックになったりする。

当初レクシたちは母親と暮らしていたよう。父親は週末には帰って来たし、祖父母も健在で近所に住んでいたのだが、母親をはじめ誰も子どもたちの面倒を見なかった。おむつもとれない赤ん坊の弟たちとレクシだけで何日もアパートに残されることもあった。ある日3人が外で遊んでいると警官が見つけ、ソーシャルワーカーに連絡した。このソーシャルワーカーが後にレクシたちの養母になる女性。

ことばをしゃべれるようになっていた上の弟は罵詈雑言しか発しなかったが、それはまだいい方だった。姉のレクシは精神不安定のために自分の髪の毛を根っこから引き抜いて、それを食べていたのだ。養母が最初に会った時、レクシの頭から髪の毛がだいぶなくなっていた。

レクシは幼いながらも弟たちの面倒を見るという責任感を持つようになっていた。だから自分が弟たちの面倒をちゃんとみなければ、自分たちは離ればなれになってしまう、という恐れを抱いている。養父母の家にいても夜中に起きだして、弟たちに何かを食べさせようとしたりするのだ。それに実母に対しても責任感を持っていて、母の世話をするために家に帰らせてくれと養母に懇願することがあった。

養父母たちは、時々レクシたちを実母に会わせている。養子になった子どもたちは、いずれ自分のルーツを知ろうとするのだから、小さいときから知っている方がよい、という考え。

実母はレクシたちを手放した後、妊娠した。それを知ってレクシは、生まれてくる赤ん坊は自分が面倒をみなければ死んでしまう、と泣き出した。その後実母はまた妊娠した。レクシはその知らせを聞いた時、大喜びしたが、その後おもらししたりかんしゃくを起したり、精神的に不安定になった。

だが、子どもおかあさんのレクシはだんだん"女の子"らしくなって、精神的にも落ち着いてきているよう。お嫁さんになって18人子どもを生むと言っている。未来の旦那さんは、服を破ったりパソコンを投げ飛ばしたりしない人がいい、と。

戦前には子どものうちから大人社会に入って働かざるを得ないために、人生に子どもらしい時間がなかった人もいたけれど.....。それにしても、以前子どもを生む機械と失言した人がいましたが、社会が育てる、という考えがあれば生む人と育てる人を分けるというケースがもっとあってもいいのではないかと思う。レクシの養父母のように、実母とのつながりを切らない、という考えなら子どものアイデンティティ形成にも影響は少ないのではないか。