2014-02-28

地獄でなぜ悪い [園 子温監督]


「恋の渦」の併映作品なので観ることに。

「恋の渦」が昭和名作喜劇映画を継承しているとすれば、「地獄でなぜ悪い」は、70年代のハチャメチャ不条理路線を継承しているように思われ....。

「てなもんやコネクション」(山本政志監督1990年)以来の眩暈を感じた。

恋の渦 [大根 仁監督]


ナニ!この映画。すっげぇおっもしろいじゃん!

冒頭シーン。アパートの一室にこの映画のほぼすべての登場人物8人が出入りしつつ延々としゃべっている。デジカメで撮ったというこのシーンは、ワンカットではなかったと思うけれど、まるでドキュメンタリーのようにそれぞれのキャラを切れ目なく写している。上映後の監督と出演者のトークショーで、このシーンは十回以上(?)撮ったと聞いて、感銘を受けた。すごいよ日本映画。監督も、役者も、かなり深い力を持ってる。同じ調子、同じ動きをテンションを変えずに短時間に何度も演じ続けるのは、力がなければできないことだと思う。

この映画は、言ってみれば、"等身大の若者を描いた"ドラマなのだけれど、人間ってやつの可笑しみを描いている昭和の名作喜劇映画に通じるものがある。あの頃と日本人って全然変わってないじゃないですか。

上映後のトークショーで生で見た役者さんたちは素も魅力的でした。監督も。スクリーンで見ていた時に感じた身長の差と実際の身長が異なることにちょっとびっくりした。平日午後というのに客席ほぼ満席で、なぜか男性客多し。20代から60代。館内が男汁臭かった。

ラスト、のけぞった(心の中で)。ドラマはまだまだ続くよ---。

2014-02-14

ソウルガールズ [ウェイン・ブレア監督]


1960年代末にオーストラリアに実在した女性コーラスグループを描いたオーストラリア映画。面白く、楽しい!

アボリジニの姉妹はカントリーミュージックのユニットを結成して町ののど自慢大会に出場するが、人種差別の現状を見せつけられるだけ。しかし司会を務めた白人男が姉妹の才能を見いだし、ソウルミュージックを演奏したらいい、とマネージャー役を買って出る。隔離政策によって都会に連れ去られていたいとこも合流して、サファイヤズというコーラスグループを結成、ベトナムへ慰問ツアーへ行く。

サファイヤズ4人のうち、末妹を演じたジェシカ・マウボーイはオーストラリアの人気シンガーとのこと。長姉と次姉を演じた2人は、それほど美人には見えないのだけれど、映画が進むうちに、特に長姉のデボラ・メイルマンが本当にステキに見えてくる。マネージャー役のクリス・オダウドもダメ男の魅力全開。

「君の家族を、オレの家族と言いたいんだ」

シビれる口説き文句だ。

アメリカ以外の土地でのソウルミュージックがテーマの「コミットメンツ」もイカした映画だった。それから、音楽がイカしているオーストラリア映画といえば「プリシラ」。この2作は大好きな映画。「マッド・マックス」も公開されるというし、オーストラリアに行きたくなった。行かねば。

映画を観たこの日、東京は記録的な大雪だった。

2014-02-12

ROOM237 [ロドニー・アッシャー監督]


映画「シャイニング」を勝手に解釈する映画。おっもしろい!!!画面に仕掛けられた謎をシャイニングに魅せられた人たちが(多分全員業界人)勝手に解いていくだけの映画。この映画と本編を交互に観たい。

冒頭の空撮シーンの意味から、オーバールックホテルの間取りの矛盾、倉庫に積み重ねられた食品のラベル、画面に映り込んだ光の反射、ありとあらゆるシーンについて突っついている。

「シャイニング」を観ていて、あれ?っと思う箇所がいくつかあるのだけれど、ストーリーを追うのに夢中になって、まぁいいや、と流してしまっていたところを、彼らは何度もテープ(!)を巻き戻して図まで描いて検証している。解説者(?)たちは、アメリカでは名の知られている業界人なのだろうけれど、こちらでは無名なので、彼らの勝手な言い分が「ROOM237」にいかがわしい雰囲気を与えている。それもまた怪しく面白い。

ROOM237とは、映画「シャイニング」で、ジャックが腐敗した老婆の霊と出会う部屋。原作では217となっているのをキューブリックが映画では237と変えた。そのことで、スティーブン・キングは大むくれしたらしい。

原作の小説「シャイニング」は、主人公ジャックが抱え込んでいる父子の葛藤を底辺で描いている。彼の心の闇とホテルの闇が出会う怖さ。ホーチミンのホテルに滞在していた時に読んだが、あまりの怖さに部屋にいられなくなってロビーでずっと読んでいた。読み終わった後は、古本屋に出してしまった。手元に置いておくのが怖くて。

映画「ROOM237」をもう一度、巻き戻しながらじっくり観たい。

2014-02-10

陽気なギャングの日常と襲撃 [伊坂幸太郎著]


「陽気なギャングが地球を回す」の続編。おもしろかった。

前半は、銀行強盗チームを結成する男女4人がある事件にそれぞれ別の局面で関わり合いを持つ様子が描かれている。後半は、その事件から派生した別の事件で、チームがそれぞれの役割を果たして現金収奪に成功する、という話。

前作が映画化されており、キャストを知ってから読んだので、登場人物を演じた役者のイメージで読んでいた。

ベテランミステリファンとしては読みながら伏線を感知したいのだけれど、伊坂氏は巧妙に伏線を仕掛けるので、前半はまたもやかなり緊張しながら読んでたが、終盤はそんなことも忘れて熱中して読んでしまった。