2011-02-26

M*A*S*H [ロバート・アルトマン監督]


朝鮮戦争の医療班を描いたドキュメンタリー調ドタバタコメディ戦争映画。おかしくて面白い!

原作も爆笑しながら読んだ。ホークアイ(ドナルド・サザーランド)とトラッパー(エリオット・グールド)のコンビの悪ふざけには本当に笑わせられ、明るい気分になってくる。

今回観てわかったのは、医師たちは徴兵されて朝鮮半島に来たということ。悪ふざけでもしなければやってられなかったのかもしれない。それと、彼らの悪ふざけは、権威や価値観の押しつけに対する反発なのでは、と思った。でも最後には、権威の象徴である婦長、ホット・リップスも医療班のチアリーダーになって、みんなに溶け込んでいた。

決められたある場所に気の合ういろんな性格の人たちが集まって、何か一つのことを長い期間協同してやっていることほど楽しくて面白いことはない。たとえそれが戦場であっても。もう一人のメインキャラクターのデュークが、帰国命令に複雑な表情を浮かべるシーンがある。このシーンは、「ハート・ロッカー」の主人公が戦場に戻るラストシーンに通じているのではないかと思った。

以前、タイを旅行中、長距離バスの車内で「M*A*S*H」を見た。タイ語に吹き替えられていて、言葉はわからなかったけれどずーっと見てしまった。

1970年制作。アメリカはベトナム戦争中。ひょっとして反戦映画なのか。

2011-02-24

容疑者Xの献身 [東野圭吾著]


すごいトリックだ!最後の30ページで明かされる真相にド肝を抜かれた!しかも真相が明かされるまでこの作品が描いている人間ドラマが、このトリックを読者に無理なく受け入れさせている。

冒頭に殺人シーンがあり、刑事コロンボ的にドラマが進行するのかと思いながら登場人物たちのドラマを読んでいた。今の時代の話だけれど、ここに描かれている人間ドラマは時代が変わっても色褪せないものがある。たいていのミステリは、真相解明シーンに至るまでの間に描くドラマにトリックの手がかりをちりばめていて、読者はそれを拾いながら読み進めていくようなところがあるけれど、この作品は描きたい人間ドラマをより効果的に描くためにトリックを使っている。2005年直木賞受賞作。

暴力夫と離婚した女性が、マンションに訪ねてきた元夫を殺してしまう。彼女を心秘かに慕っている隣人の数学教師は殺人があったことを知り、遺体遺棄とアリバイ作りを買って出て女性の窮地を救う。しかし、聞き込みに来た草薙刑事の目の前で郵便物を取ったことから、名探偵ガリレオこと湯川博士の同窓生であることがわかり、湯川が事件に関わることになり、結局真相を暴かれてしまう。

郵便物を取らなければ湯川が関わることにもならなかったと思う。数学教師は女性に刑事には必要最低限のことしか言わないように、と言いながら自分は余計な動作で綻びを作ってしまった。

映画化されたが、数学教師のキャストは小説のイメージと正反対。これでは作者が描きたかったことを映画は描いていないのではないかと思う。

2011-02-21

宇宙からのサウンド [NPR]


Original Title: Tuning In Space Noise For Sounds Of Life

宇宙の色々な音とそれを研究している人たちについての話。

NASAのケプラー・チームの研究員は、惑星が発している光の電磁波を音に変換している。ケプラー・チームは2月初めに我々の銀河系内で水が存在しそうな54の惑星を”発見"した。アイオワ大学の物理学教授は宇宙の様々な音を40年以上集めている。

ある惑星が発している光の音は、重低音。オーロラの音は、受信の悪いラジオのチューナーを合わせようとしている時に聞こえる音のよう。何か人の声が背後に聞こえる気がする。土星のオーロラの音は、モノクロ映画時代の宇宙人が登場する時の効果音のよう。

地球外知的生物探査研究所では、宇宙にある電磁波を受信して"宇宙人"からのメッセージを見つけ出そうとしている。自然に存在する音はブロードバンドで様々に変化するが、人工的な音は一つのチャンネルだけが受信するはず、と地球外知的生物探査研究所の研究員は言っている。

この記事のページで宇宙の音を聞くことができる。宇宙の音を聞くと、深遠なミステリーの迷宮に迷い込んでしまいそうだ。

2011-02-20

犬の祖先はキツネかも [NPR]


Original Title: Man's First Best Friend Might Have Been A Fox

ヨルダン北部の埋葬遺跡から人間と一緒にキツネが埋められていたのが発見された。

考古学者が発見したのは、1万6千年前の遺跡で、人類が動物を家畜化する何千年も前の遺跡。その4千年後の遺跡には人間と犬が一緒に埋葬されており、1万6千年前のキツネの埋葬方式と共通点があるとのこと。つまり、一緒に埋葬されたキツネと人間には何らかの感情的な関係があったと推測される。

考えてみるとキツネも犬科だ。犬の祖先はオオカミだけでなくキツネだった可能性もなくはない。遺伝子的にはどうなのだろうか。

写真はうちの犬。オオカミというよりキツネというよりタヌキだ。タヌキ説も考えられるのではないか。

ヘイを使った料理の数々 [GOOD FOOD]


Original TItle: Cooking in Hay (11:19AM)

サンフランシスコの有名レストランIncantoで料理にヘイを利用している話。

ヘイは昔はよく使われていた。豚の毛を取り除くのに使ったり、ハムを作る時にヘイを入れた水で肉を茹でて風味付けしたり。このIncantoのシェフは、昔の料理本を読んで、今風にアレンジしてヘイを使おうと思ったとのこと。

店で使っているヘイはオーガニックのヘイで、甘い香りがする。カラメルや栗のような、子どもの頃を思い出すノスタルジックな香りとのこと。

燻した豚肉を濡らしたヘイに包んで店内でローストすると、お客がみんなその香りに興味を持ってスタッフにたずねるという。店ではヘイで薫製にした魚料理、ヘイ・アイスクリーム、ヘイオーリーといったヘイを使ったメニューをいくつか提供している。

ところでヘイとは何?ヘイはワラだと思っていたが聞いている内にわからなくなってしまった。ヘイ・アイスクリームとは?辞書で調べたらやっぱりヘイはワラのことだった。ワラ・アイスクリームってどんなアイスクリームなのだろう。

デコポン、カリフォルニアにデビュー [GOOD FOOD]


Original Title: Citrus Intrigue

2011年からカリフォルニアでデコポンが販売されるようになった。ロサンゼルスタイムズにコラムを持つ果実愛好家がデコポン販売までの道のりを紹介している。

デコポンは清見オレンジとポンカンの交配種で1972年に長崎で初めて収穫された。1990年代頃から日本の市場に出回り始め、一時は1個1000円近くした高級果物。今では韓国、ブラジル、中国でも栽培されている。

この高級果物をアメリカでも栽培販売したいところなのだが、デコポンに付着する菌がカリフォルニアオレンジに害するので輸入禁止されている。これまで何回か苗木の密輸が試みられたものの当局によってすべて焼却されている。日本の宗教関連の農業カルトが密輸したこともあるらしい。

しかし正式に輸入された苗木もある。1998年にカリフォルニアの著名な果樹園スターク家が輸入した苗木は、柑橘類保護プログラムによって菌を除去したもので、カリフォルニアで唯一栽培可能な苗木だった。

しかしスターク家はその後破産。正式なデコポンの苗木はカルフォルニアから姿を消してしまう。この果実愛好家が執拗にデコポンを追い求めていたところ、ある日ある栽培家から電話がかかってくる。まるでサスペンス映画のように「君がデコポンを見つけたとは困ったことになったね」と。それが2009年のこと。

スターク家のデコポンは秘かにある果実販売会社に引き取られていて、極秘に栽培販売計画が進行していた。とにかく売り出せば需要が高い高級果物なのでライバル会社に絶対知られてはならない企業秘密だった。そして今年2011年、カリフォルニアで初めてデコポンが収穫され市場で販売されるようになった。

ところでカリフォルニアではデコポンは「スモー」という名前で売られている。デコポンという響きがアニメのキャラクターみたいだからとか。どっしりした外観と日本原産ということでスモー(相撲)という名前になったとのこと。

レポートしているこの果実愛好家はこれまでに1000種以上の柑橘類を賞味してきたが、デコポンは最高!天上の果実だ、とまで言っている。TPPで日本の農業が衰退するのではとの懸念があるが、高級果物には活路があるのではないか。

2011-02-19

ブラック・サンデー [ジョン・フランケンハイマー監督]


手に汗を握った!!

故国のために戦う愛国者、自尊心を奪われた敗残者、彼らを追い詰めていく追跡者。それぞれの人間ドラマがサスペンスによって縒り合わせられている。

イスラエルの情報機関がベイルートにあるパレスチナ人テロ組織のアジトを急襲するが、首謀者はアメリカへ逃げてしまう。遺留品から大規模テロの計画が発覚。首謀者をそれと知らずに見逃してしまったイスラエルの情報将校はアメリカに渡り、首謀者を追い詰めていく。

このテロ計画に荷担するのが、ベトナム帰還兵のパイロット。ベトナムで捕虜になり、精神的傷害を負って復員した。しかし故国も家族も彼の痛みに対して寛容ではない。

終盤、テロリストたちと情報将校との対決に本当に手に汗を握ってしまった。特殊撮影シーンの連続で、最近の特殊撮影と比べると舞台裏がバレバレなのだけれど、演出と俳優の演技と編集が素晴らしく、息を詰めて見入ってしまった。

1977年制作。この映画が描くテロ計画の背景には、イスラエルを支持するアメリカへの反発がある。ユダヤ人入植で故国を追われたパレスチナ人の痛みをアメリカ人も知れ、ということ。あれから34年経ったが状況は変わらず。この映画を観た前日、国連安保理で、イスラエルによる入植を違法と非難する決議案がアメリカの拒否権で廃案になった。

トマス・ハリス原作。トマス・ハリスは「羊たちの沈黙」も書いている。この映画は制作当時日本で公開されず、今回が本邦初公開だった。

2011-02-18

普段に生かすにほんの台所道具 [吉田揚子著]


素晴らしい大人の家庭科教科書だ。

日本の伝統的な台所道具の紹介と、その道具を使って調理するお惣菜の紹介。

この本を読んで、やっぱり鉄瓶が欲しいと思った。それから曲げわっぱとほうろくが欲しくなった。

ゴマはフライパンで炒っていたが、熱を帯びるとあっちこっちに飛び散るのがいやで、最近はしけったまま使っている。ほうろくがあれば手軽にゴマを炒ることができる。自然塩をほうろくで炒ってすり鉢で擂ればサラサラになる、というのを読んでますます欲しくなった。

まな板とタワシについてもいいことを知った。タワシでまな板の木目に沿ってゴシゴシこするだけできれいになるというのでその通りにしたら、まな板本来の白さが戻ってきた。

それからこの本で知った衝撃の事実。果物に含まれる果糖はしわを作りやすくするとのこと。今まであまり果物を食べていなかったが、それでよかったのか。

おろし具の項にこうある。「使い終わったら流水で洗って水気を拭い、場所をとらずに収納できる。分解して洗浄する必要も、電源も必要ない」たしかにそうです。オーガニック材料で作るお菓子のレシピにフードプロセッサーが使われているのを読むと、矛盾を感じる。

これらの道具は今では値段が高くなっていると思うが、丁寧に使えば減価償却期間が長くなって、結局は安くなる。それに頻繁に買い替えることがないからゴミにならず資源保全にもつながる。これこそが正統なロハスだ。

2011-02-12

白鯨(中) [ハーマン・メルヴィル著]


この巻は捕鯨船の航海を描いている。メルヴィル自身、捕鯨船の乗組員だったのでその描写には真実味がある。

中巻でも鯨に関する博学が多い。19世紀時点での最新情報なので、今読むとそれは違うでしょう、という部分が少なからずある。

それにしても!白人はなぜ20世紀に入ってから愛鯨家に転向したのか。白人が愛鯨家になった過程を調べるのは面白いかもしれない。

この本を読んで、白人の捕鯨は単に脂をとるためだけのものだったのか、ということがよくわかった。捉えた鯨の皮を剥いで本体を海に流す描写がある。そんな無駄な捕鯨を続けていたあげく、鯨のすべてを利用する捕鯨を否定するなんて。

訳注を読むのは面白いが、本編を読み切るのにとても時間がかかった。下巻も読みますが、その前に、リラックスして読める本で小休止をとります。

2011-02-09

アラバマの悪人正機 [NPR]


Original Title: At End-Of-The Line Prison, An Unlikely Escape

アラバマ州の重犯罪刑務所で、ヴィパッサーナという瞑想を取り入れたことで、受刑者が精神的に落ち着き、罪と真摯に向き合うようになったという話。ヴィパッサーナとは「物事をありのままに見る」という意味。

瞑想療法は10年程前から取り入れられた。厳格な菜食、タバコやコーヒーの摂取禁止、会話禁止。所内のジムで数時間座禅を組み、内なる自己と向き合う。

瞑想の指導者は、受刑者の心はパンドラの匣のようなものだと言う。悲惨な子ども時代、犯罪を重ねてきた中で積み重ねてきた負の感情。最初は自分に向き合うことに耐え難く叫び出す者もいるとのこと。でも瞑想を続けることで自分自身の恐れを知り、自分自身と正面切って向き合うことで精神的に落ち着いてくる。

麻薬絡みの殺人で終身刑の61才の受刑者は、他の受刑者を助け、自分ができる限りのより良い人生をこの終の棲家で送りたいと言っている。

ヴィパッサーナは仏教の教えから来ている瞑想療法であるため、キリスト教的価値観が損なわれるのではないかと刑務所の教戒師は懸念していたが、受刑者の更正に劇的な効果を上げているので、女子刑務所でも取り入れようという動きがあるとのこと。

最近新約聖書を完読したのだけれど、詩篇を読むとこの宗教は"ひねもす虐げられている"人々のための救いのようだ。”わたしたち"を虐げている人たちに神は思い知らせてくれるという希望を与えているように読める。受刑者は潜在的に自分を"しえたげられている"とみなしているのではないだろうか。

仏教は神との対峙というより、自分との対峙だ。自分と正面切って向き合うことほど難しいことはない。しかしそれが解脱への一歩になるわけで、私も修行中の身といえます。

キリスト教色が強い米国南部で東洋の瞑想が刑務所で生きているというこの不思議な世界が映画になったとのこと。タイトルは「East Meets West in the Deep South (最南部で東洋が西洋と出会う)」

まさに、善人なおもて往生す、いわんや悪人をや、ですね。

2011-02-05

有名シェフのガチンコ給食対決 [GOOD FOOD]


Original Title: Jamie Oliver Exclusive

有名なイギリス人シェフがアメリカの学校給食を改革すると意気込んでいるらしい。ロサンゼルスの学校を舞台に、学校給食をいかにおいしく栄養のあるものにできるかをドキュメンタリー番組に仕立てた。いわゆるガチンコ対決番組。ところが、ロサンゼルスの教育委員会(?)はシェフのテレビ撮影を取り止めさせようとしている。

ロサンゼルスでは学校を舞台に、この有名シェフの番組のみならず、ガチンコ対決番組が流行っているよう。しかし教育委員会はこうしたガチンコ対決番組の撮影に難色を示している。学校がテレビ局に撮影料を要求する、撮影で授業に支障を来たす、番組が学校の実態をありのまま伝えていない、などの問題が多いからだ。

イギリス人有名シェフの場合、演出であえて当事者を対立させたり、このシェフが給食のおばさんをこづいたりしているとのこと。

GOOD FOODの番組ホストがこのイギリス人シェフにインタビューしているのだが、シェフの話しは全然要領を得ない。給食改善について問いかけても、イギリス人シェフはなんだか自分のことばっかり。

シェフのインタビューの後に教育委員会へのインタビューもあって、ここまで言うかというほどシェフをこき下ろしている。ロサンゼルスの給食より劣悪な状況にある地区は他にあるのになぜロサンゼルスに来たのか。主要テレビ局の本社があって、ニューヨークより暖かいからだろう、と。

このシェフはイギリスでは何らかの成果を上げたとのこと。シェフと教育委員会のガチンコ対決、どうなるのか。