2012-01-31

おいしい手づくり手帖-ていねいに暮らす- [河合真理著]


手作り味噌、手作りウスターソース、手作りハム、手作りうどんなどのレシピとともに、著者の暮らし哲学が語られている本。

これだけ広範囲の手作り生活はできないけれど、ナス、ミョウガなどの夏野菜を干して醤油漬にするとかならできそう。夏野菜でできるなら冬野菜でもできるのでは?、と思い大根を干して醤油漬にしてみた。カンタンだけどおいしい一品ができました。

これをきっかけに野菜を干すことに興味を持ったのだけれど、今野菜や果物を干すのが流行っているのですか?干し野菜の本を何冊か見かけ、すっかり干し野菜づいてしまっている。

ハーブをハチミツと湯冷ましに漬けて天然酵母を作り、パン種を作る、というのにも興味をそそられる。以前リンゴを使った天然酵母作りに挑戦して全くうまくいかなかった。ローズマリーとミント、イタリアンパセリを植えているので、新芽が出てきたら天然酵母作りに再挑戦し、こねないパンのレシピでパンを作ろうと思う。

手作りうどんも面白そうだ。干し野菜の醤油漬でぶっかけうどんにしたらどうだろうか。夏が楽しみになってきた。

2012-01-29

サウンド・オブ・ミュージック [ロバート・ワイズ監督]


感動!感動です。スクリーンで観るべき映画だ。

名曲の数々。ジュリー・アンドリュースの心打つ歌声とコミカルなかわいらしさ。厳格でお茶目なクリストファー・プラマー。美しいアルプスの山々。感動。

しかし「サウンド・オブ・ミュージック」のトラップ大佐は不思議な人物だ。奥さんを亡くしてから子どもたちを軍隊式に育てる一方で、ウィーンの男爵夫人の家に1ヶ月も居続けるようなだらしなさもある。そしてオーストリアがナチスに併合されるとわかると、家屋敷をあっさり捨てて着の身着のままで亡命してしまう潔さ。

ジュリー・アンドリュース演じるマリアが恋してしまう不思議なトラップ大佐が魅力的に見えるのはクリストファー・プラマーが演じているから、という気がする。矛盾する性格を抱える人間を観客に自然に受け入れさせるのは、役者自身にも相当の魅力がないとできないことではないだろうか。名優だ。

「サウンド・オブ・ミュージック」は1965年制作。約半世紀後の2012年、クリストファー・プラマーは初めてアカデミー賞を受賞。助演男優賞。歴代受賞者の中で最高齢とのこと。「サウンド・オブ・ミュージック」でもいい男だが、83才の今も魅力的な"男性"だ。

「サウンド・オブ・ミュージック」を観ていてミシンが欲しくなってしまった。ミシンで服を作れたらいいなぁ。

2012-01-28

ビルマ料理のこと [GOOD FOOD]

Original Title: Burmese Food

2011年末からビルマに民主化の動きがあり、米国との外交も正常化しつつある。そこで、ビルマ料理について取り上げてみたよう。

ロサンゼルスの有名レストランのオーナーシェフは長年ビルマ料理に興味を持ち、自分の店でもメニューに載せている。

ロサンゼルスのビルマ・コミュニティは小さいのだけれど、毎年ビルマ料理フェアを開催しているらしい。ビルマ料理は他の東南アジア料理に似ていて、インドと中国、さらにタイの影響を受けている。

このオーナーシェフはラペットというサラダの作り方を2年間追い続けていて、未だに謎は解明されていない、と言っている。ラペットはキャベツに揚げた豆、ヒマワリのタネ、発酵させて酢漬けにした茶葉、唐辛子、ニンニク、レモンジュースで作る。発酵酢漬け茶葉が料理に独特の風味を添えているとのこと。だがその作り方は不明。

店で出しているサラダにはこの茶葉を使っているのだが、ビルマから直接入手したそうで、どのように持ち込んだのかについては言えない、と言っている。映画「トラフィック」並みの手段で持ち込んだようなことを言っている。

2012年4月のビルマ総選挙でアウン・サン・スーチー氏が当選。軍部との和解がすすんでいる様子。私が毎年利用している旅行会社Intrepid Travelは去年からビルマでのツアーを実施しているのだけれど、これが大人気で、2012年12月のツアーが1月にすでに満席になっている。ビルマ、是非行ってラペットを試してみたい。


2012-01-25

FBI美術捜査官-奪われた名画を追え- [ロバート・K.ウィットマン ジョン・シフマン著]

FBIで美術窃盗事件の潜入捜査官だった著者の、自分史。

鬼平的潜入捜査とジョン・ル・カレ的官僚対立も描かれていて面白い。美術史レクチャーもあり、盛り沢山の内容。この本でも、理想の上司について書かれている。つまり、細かいことに口出しせず、自分の手柄に固執せず、部下に裁量を任せて、美術品奪還と犯人逮捕を最優先目標として仕事をする上司。たぶんそれは読者の殆ども賛成することだと思うのだけれど、なぜ自分が管理職になると正反対のタイプになってしまうのか。たぶん、自分に対する信頼と強さが欠如しているからなのでしょう。

美術品窃盗捜査は、麻薬やテロ捜査より下に見られているが、美術品がうまく回収されたニュースは華々しく新聞紙面を飾り、読者のウケがいい。人々は血生臭い事件より、心がほっとする報道の方を求めているのだ。特に盗掘品が回収されるニュースがなぜ歓迎されるのか。

盗掘は「ほかの美術品泥棒とは異なり、私たちが過去を知るよすがを奪っていくのだ。---中略---埋蔵品が盗掘されると、考古学者は背景に則した研究、すなわち歴史を実証する機会を失ってしまう」「すべての人々から盗みを働いているに等しい。」と著者は言っている。

著者の人生の転機となったのは、自動車事故。飲酒8時間後に起こした自損事故で同乗の同僚が死亡する。無罪を勝ち取るし、この事故の裁判をきっかけに潜入捜査官として必要な知識や経験を積むようになるのだけれど、私がこの本から得たことは、飲んだら乗るな、です。

2012-01-22

レストランのまかない飯 [GOOD FOOD]

Original Title: Family Meal

全米の一流レストランのまかない飯をまとめた本(Staff Meals from America’s Top Restaurants)が出版された。その著者にインタビュー。

殆どのレストランはまかないを作っている。人が食事をしている間、6時間以上働き続ける重労働だから、滋養のある食べ物をスタッフに提供している。厨房、ホール、すべてのスタッフが一緒に食事をすることで、店の情報交換というか情報共有にも役立っているらしい。

どんな料理があるかというと、フィラデルフィアのレストランではマカロニチーズとミートローフといったシンプルなもの。シカゴのレストランでは残り物のアヒルの脚のフライを自家製ソースにからめたものとワッフル、コールスローサラダ、など。

まかないから正式メニューになることもある。サンフランシスコのレストランでは、まかないを作っていたメキシコ人スタッフが独立して店を出したケースもあるそう。

"まかない"には地方色もあるようで、ニューオーリンズでは経営者、従業員が揃ってファミリーとしての連帯感を持って一緒に食事をとっているけれど、競争の激しいニューヨークでは休み時間もほとんどないまま働きづめでいる。

なじみの寿司屋に「お寿司屋さんのまかないちらし寿司」というメニューがある。刺身の切れ端を利用したちらし寿司なのだけれど、具材が十種類以上入っていて、具を肴に飲んで最後にすし飯で締めるという一挙両得の一皿。

2012-01-21

ナバロンの要塞 [J・リー・トンプソン監督]


スリル、サスペンス、冷酷、友情、裏切り、ユーモア、恋。全ての要素がうまく配分されている。手に汗握った!

グレゴリー・ペックがクールだが人間味のある人物を演じていて、ホントかっこいい。一方、爆発物専門家のデビッド・ニーブンのおかしさがスパイスとなってドラマに深みを与えている。もちろん、アンソニー・クインの渋さとかわいさも魅力だ。

男性映画かと思うが、ギリシアの抵抗軍ゲリラの女性たちの活躍も生半可でない。イレーネ・パパスが演じるマリアは強く、迷いがなく、人間として美しさを感じさせる。

敵役であるドイツについては、ドイツ軍将校を誇りある存在として描く一方、ナチの冷酷さを強調している。

「ナバロンの要塞」で、イギリス軍の作戦は成功して、映画としてはハッピーエンドだけれど、作戦遂行の陰で戦死していったドイツ兵もいるわけで、郷里で死亡通知を受け取った家族にしてみれば、見張りをしていて殺されたなんて、ひどい。戦争は理不尽だ。

1961年制作。

2012-01-14

灼熱の魂 [ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督]


カナダに移住した中東出身の女性が、子どもたちに奇妙な遺言を残して亡くなる。すでに成人になっている男女の双子は、母親の遺言に従って、死んだはずの自分たちの父親と、存在さえ知らなかった兄を探す旅に出る。

亡くなった母親が中東のどの国の出身なのかは定かではないが、故郷の村から都会へ移る旅と、双子の娘の方が母親の痕跡を求めて中東の町を旅する場面が交互に描かれる。母と娘を演じる二人の女優がとてもよく似ているので、場面が変わった時に、どの時代にいるのかちょっと混乱する。それが映画のテーマを表わしているわけだけれど。

ヨルダン旅行から戻った10日後にこの映画を観た。中東がまだ身近に感じられる時だったので、より深く心を打たれた。登場人物が身につけているスカーフの色でどちら側の人間なのかすぐ判るくらい中東気分から抜けていなかったので、人ごとに思えなかった。

「灼熱の魂」を観ながら思ったのは、サンデル教授のいうコミュニタリアンの考えを持たざるを得ない世界が厳然とあるんだ、ということ。リバタリアンかコミュニタリアンか、という論争をしている場合じゃないんだ。

「その人自身は同意した覚えがなくとも人間には守らなくてはならない道徳的つながりがある」。もし「灼熱の魂」の双子が、生まれる前のことは関係ないと自分本位で生きていくことを示したら、観客はこの映画からこれほどの感銘は受けないと思う。

映画紹介のあらすじから、"衝撃の結末"を予想していたけれど、そこに至る経緯に絶句。観客は腰を抜かしていた様子。

2012年1月時点で、シリアでは政府による弾圧で4000人の市民が殺されているとのこと。エジプトの反政府デモで逮捕された女子学生が拘置所で性的な屈辱を受けたことも報道された。映画が描く世界は、現在進行中なのだ、ということが一番怖ろしい。

ラーメンの歴史 [GOOD FOOD]

Original Title: History of Ramen, Lucky Peach

ニューヨークの有名レストラン、モモフクが食の季刊誌を発行。第一号でラーメンを取り上げており、番組ホストが編集者にインタビュー。モモフクはインスタントラーメンを発明した安藤百福と関係はない様子。

ラーメンは中国で生まれた料理だが、日本に移民した中国人が横浜で現在のいわゆる"ラーメン"を作り上げた。横浜から東京へ移り、鶏ガラスープから豚ガラスープと変化し、現在に至る、とのこと。

ラーメンが他のアジアの麺料理と異なるのは、かん水麺を使っているから。かん水が入っているので、麺にコシができて、熱いスープの中でも伸びなくなっている。

番組ホストがスープは何種類くらいあるのか、と訊ねたところ、編集者は驚きというか諦めのため息をついている。基本はショーユ、シオ、ミソ、トンコツの4種類なのだけれど、地方によって独自のスープを開発しているし、店によっても独自のスープを開発しているから、その種類は無数にあるんだ、と。麺の種類も地方と店によって無数にある。ちぢれ麺、細麺、太麺。

トッピングの脂について。通常スープに浮く脂はすくい取ることになっているけれど、ラーメンの場合脂をとったらおいしくなくなる。むしろ加えるぐらいの重要な要素になっている。

ここでニューヨーク出身のアメリカ人が日本で始めたラーメン屋、アイバンラーメンについて話している。ユダヤ人だからスープに豚の脂があるのは抵抗があったけれど、今では改良したシュモルツを加えておいしいラーメンを作っていると。シュモルツはユダヤ料理で使う鶏や鴨の脂。

アイバンラーメンという名に聞き覚えがあったので調べてみたところ、経堂にあるラーメン屋らしくないラーメン屋のことだった。早速行ってみた。コクがあるのにあっさりしたスープ。ちょっぴりユズコショウを加えているらしい。細めでまっすぐの固い麺。自家製麺とのこと。おいしかった。シュモルツはうっすら浮かんでいた脂のことか。

以前この番組で、「つじ田」がロサンゼルスに店を出した、と話題になったことがあり、つじ田のお茶の水店に行ってみた。コラーゲンたっぷりのスープがおいしかった。アメリカのラジオに東京のおいしいラーメン屋を2軒も教えてもらった。ラーメン、アメリカ人をとりこにしている。

写真は喜多方で食べたラーメン。

2012-01-07

アンジェリ・カフェ閉店のお知らせ [GOOD FOOD]

Original Title: Angeli Caffe Closes after 27 Years

番組ホストが1984年にロサンゼルスにオープンした「アンジェリ・カフェ」が1月13日に閉店した。L.A.の公共ラジオ局のインタビューで店の思い出を語っている。

1980年代まで、良い素材を使った美味しい料理を、それなりのお値段でカジュアルな雰囲気の中で提供するお店は殆どなかった。、番組ホストがアンジェリ・カフェをオープンした時は、2時間待ちの長蛇の列ができたとのこと。席数24席と小さな店で、メニューはピザ、パニーニ、サラダ、と数少なく、温かい料理はオープン後1ヶ月経たなければ提供できなかったのだが、店は超人気店となった。

番組ホストは学生時代、毎夏イタリアを旅していたし、クラブ通いよりも母や祖母と台所で過ごす方が居心地がよかった。体に良い素材を使った家庭的なイタリア料理に魅力を感じていたので、イタリア料理中心のメニューを考えたとのこと。

1980年代は団塊の世代が一家を構えて経済的余裕を持てるようになった頃で、洒落た店で一家で外食、という傾向が顕われた頃でもある。外食産業にとっても転換期だった。

アンジェリ・カフェではオープンから27年間、同じスタッフが調理し、給仕していた。2008年のリーマンショック頃から経営が苦しくなったが、長年店で忠実に働いてくれていたスタッフを解雇することができず、なんとか頑張ってきた。しかし売り上げが落ち込み、これ以上経営を続けることができなくなってしまった、とのこと。

1980年代が飲食産業にとって転換期だった、というのは世界的な現象だったのか、と思った。日本でもカフェ・バーが登場。その後洒落た雰囲気の中でそれなりのお値段で飲食できる店が次々と現れている。今も小洒落た狭いカフェがあちこちにできている。

アンジェリ・カフェ、一度行ってみたかった。