2011-05-20

天使と悪魔 [ダン・ブラウン著]


荒唐無稽だ。荒唐無稽すぎる。が、ものすごくよく調べて書いてあるからのめりこんで読んでしまった。

ハーバード大学の象徴学の教授、ラングレンは早朝の電話で叩き起こされ、スイスにある科学研究所へ連れて行かれる。そこで歴史上の秘密結社イルミナティがいまだに存在し、この科学研究所で発見された反物質を使って仇敵バチカンにテロを仕掛けていることを知る。反物質爆発までの6時間の間にイルミナティの暗殺者の居所を突き止め、バチカンを救わなければならない。スリルとサスペンスが満載。

「ダビンチコード」もそうだったが、中世の芸術家、科学者が残した作品を読み解いて手がかりを得ようとする過程が面白い。しかもそれらの作品は実在するわけだから、そこに意味を見い出してプロットに取り込んでいるダン・ブラウンはすごい着想力を持っていると感心してしまう。

観光で訪れたら、裸の男の石像がある、とか、天使がポーズをとっている、としか見えない作品に、隠された歴史背景と深い意味があることを知れば、もっと面白く楽しく眺めることができる。それを知っているというのが「教養」で、タモリ氏も言ってるように教養があるということは人生のお楽しみが増えるということですね。

この作品に登場するのは、サンタ・マリア・デル・ボボロ教会、サンピエトロ広場、サンタ・マリア・デッラ・ヴィッットリア教会、ナヴァーナ広場の噴水など。

謎解きと追跡というミステリだけでなく、最後の最後にテーマである科学と宗教にまつわる大どんでん返しがあって、作者の仕掛けたトリックに圧倒されて終わる。

すでに映画化されているので、登場人物のうちカレルメンゴはずっとユアン・マクレガーのイメージで読んでいた。原作のイメージにぴったりだ。

この作品は「ダ・ヴィンチ・コード」より前の作品。「ダ・ヴィンチ・コード」の方が小説としての出来がいいのではないかと思う。この作品は、謎解きの核心に迫る息詰まる瞬間にいきなり場面転換になって緊張感がぶっつり切られることがままあった。