2010-06-22

利休にたずねよ [山本兼一著]


千利休切腹から時間を遡り、千与四郎(のちの千利休)が茶に命をかけるようになった出来事まで辿る。そして千利休切腹後に時間が戻り、話が終わる。

千利休を多角的に眺めるために、色々な歴史的人物の目を通して千利休切腹に至るまでの経緯を追っている。美の追究者、策士、頑固者、前衛芸術家、哲学者、商ん人。利休本人の目から見た語りもある。でも文体はいずれも三人称。

この本を呼んでいる途中で、京都の山崎を訪れることがあり、待庵の実物大複製を見た。二畳の茶室とはどんなものなのか、想像してもよくわからないところがあったが、複製ながら現物をみて納得できた。床や天井、窓で空間の広がりを錯覚させながらも、二畳という狭さが客と主人との距離をぐっと縮め親密度を高める演出になっている。

"茶"は、明日をもしれぬ命同士が対する濃い情の交換の場であり、政治の場であり、策をめぐらす場なのですね。床の間の軸、花入れと花、道具、すべてに意味があり客はその意味を汲み取る力を要求されている。

それにしても、日本人にはそもそも自然や生活道具に自分なりの美を見い出して、それをことさらに表わしたいという欲求があるのではないだろうか。今流行りのロハス系の人たちも古道具やオーガニック料理を魅力的に表わそうとしているし、それに魅力を感じる人たちもいる。

通勤途上にあるお茶の稽古場の玄関先に木槿が植わっている。木槿はやはり"茶"と深い関わりがあるのでしょうか。