2010-04-03

ロミオとジュリエット [フランコ・ゼッフィレリ監督]


シェイクスピアの凄さが初めてわかった。

ゼッフィレリが制作したメトロポリタンオペラ劇場の「ラ・ボエーム」の舞台装置は30年経った今も使われていて、幕が開くと観客が思わず拍手をしてしまうほどの素晴らしさだとのこと。この映画でもセット、ロケ地、衣装、すべてがゼッフィレリの美意識を表わしている。屋内の調度はすべて本物のように見えるし、仮装舞踏会のシーンで役者が着ているドレスはどれも重厚で上質の生地で作られた意匠を凝らしたものばかり。

ジュリエットは13才だよ。中学1年生だ。思春期は子どもに比べると行動力の値がぐんと上がる。美人に生まれて生きるってどういう気持ちなのだろうか。美人は早いうちから他者から働きかけられ、どんどん世界が広がっていく。不細工だと誰も働きかけてくれないから、自分が気づくまでずっと子どもの時と同じ世界に居つづける。不細工でぼーっとしていたら尚更だ。

シェイククスピアの作品がなぜ末永く取り上げられているのかよくわかった。人間の美しさ、弱さ、醜さ、強さを絶妙のあんばいで配している。ロミオとジュリエットの美しい恋、ヴェローナから追放されて泣きわめくロミオの弱さ、見境なく敵を挑発する両家の醜さ。それから脇役にもドラマがあるから、役者は演じ甲斐があるというもの。「シェイクスピアの恋」をもう一度観てみたくなった。