2011-07-11

所得格差は経済成長の足かせか [NPR]


Original Title: As Income Gap Balloons, Is It Holding Back Growth?

史上最大の所得格差についての話。

市場に影響を与えるので、連邦準備制度理事会の理事たちは慎重に発言するものだが、6月、理事の一人、ラスキン氏は率直に所得格差に対する懸念について発言した。連邦準備制度理事会は、米国の中央銀行に当たる。

米国では1928年以来今が一番所得格差が大きい。ニューヨークタイムズによると、2010年に企業経営者の給与は23%上昇したが、一般労働者の給与は0.5%しか上昇していない。人口の0.1%が全米所得の10%を得ている。この格差はカメルーンやアフリカ西岸諸国と同じレベルだ。

なぜ所得格差が広がったのか。

1980年代頃まで、企業経営者は自分の給与を必要以上に増額しようとはしていなかった。この時代の経営者は第二次世界大戦を経験しており、恐らく、社会と自分の関係について考えるところがあったのではないか。

しかし、現代の経営者の考えは異なるようで、ある企業では30年前に比べて経営者は10倍の給与を、社員は9%少ない給与を支給されている。インフレを考えると、実質はかなりの減額だ。

連邦準備制度理事会のラスキン氏は、所得格差は家計支出の抑制、貯蓄の減少、犯罪の多発などにつながり、経済混乱が起こると言っている。

ちょうど1年前の2010年7月に、上院で市場の監視と規制を強化する財政再建法案が通過したが、この1年所得格差を縮める効果は上がっていない。

所得格差の大きい南米諸国が常に社会不安に悩まされ、経済が行き詰まっていることを考えると、著しい所得格差は国に悪影響を与えるのは明らか。何より、お金を経済の血液と考えれば、一つ所にお金が集まって流れていかないのは、動脈硬化と同じ状態だ。

ハーバード白熱教室でサンデル教授は、リバタリアンを批判しているし、異端の経済学者ポール・クルーグマンも、高額所得者への減税に反対している。こういった著名学者が、所得格差を促進する社会のあり方に異議を唱えており、彼らが注目されているということに希望を見いだせるかもしれない。

9月中旬からニューヨークで格差是正を訴えるデモが始まり、全米に飛び火している。この問題はかなり大きな騒動になりそうだ。