2011-07-10

007/危機一発(ロシアより愛をこめて)[テレンス・ヤング監督]


007シリーズ、というかアクションスパイ映画の原点、と言える作品。

ジェームズ・ボンドに扮した囮がやられる冒頭シーン、顔を見せない親玉が長毛の猫をかわいがる演出、世間を欺く姿が世界チャンピオンの敵役、冷酷無情の金髪の殺し屋。そして、ユーモアと冷たさを合わせ持つモテまくりプレイボーイの主人公。

007シリーズは、ヒロインが2人登場して、1人は途中で殺されてしまうのだけれど、ロシアより愛を込めての場合、2人目のヒロインはもしかしてローザ・クレッブなのか。ボンドガールのダニエラ・ビアンキは本当にきれいな女性だ。が、この映画の声は吹き替えとのこと。本人の英語はあまりにもイタリア語訛りが強かったから。

ボンドとタチアナが初めて出会うシーン。ボンドがホテルの部屋に入って来て、服を脱いでシャワーを浴びようとすると物音が聞こえ、腰にバスタオルを巻いて寝室に様子を見に行く。ワンカットだったと思うのだけれど、ショーン・コネリー以後、ボンド役のオーディションで候補者にこのシーンを演じてもらっているとのこと。何でもない動きだけれど、緊張、ダンディな色気、スリルを演じ見せなければならない。このシーンがオーディションに使われているということは、やはりショーン・コネリーが007役の原点ということですね。

伊丹十三氏が、ただ歩いているだけで絵になる役者がいれば、自分の映画にそういうシーンを入れたい、というようなことを言っていた。

「危機一発」という邦題は水野晴夫氏が付けたとのこと。危機一"髪"ではなく、"発"なのがミソらしい。

「ロシアより愛を込めて」は1963年制作。43年後の2006年の「カジノ・ロワイヤル」にはショーン・コネリー・シリーズのオマージュが散りばめられているような気がする。両方に登場するベニスは全く変わっていない。ダニエル・クレイグの契約はあと1本残っているらしいが、MGMの経営危機で007シリーズはどうなるのか。