2010-07-02

世界を変えた6つの飲み物−ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史−[トム・スタンデージ著]


おもしろい!すごく面白い本です。

"人類"が発明・発見した飲み物を通して、人類の歴史を語っている。飲み物が作られた状況、飲まれていた状況、その飲み物が持つ社会的意味について書かれている。飲み物を通して、その時代の庶民の生活が生き生きと浮かび上がってくる。

この本は、その時そこで暮らしていた大多数の庶民のささやかな欲求の積み重ねが時代のうねりを生み出し、歴史を作り出したのだということをドラマのように描いている。

ビールを飲む時、乾杯してグラスを合わせるのはなぜか。ビールは最初大きな龜で作りそこにみんながストローを差し込んで飲んでいた。同じ龜から飲んで連帯感を分かち合っていた名残がグラスを合わせる行為として残されているのだということ。

ギリシア人はワインを水で薄めて飲んでいたということ。ワインを原酒で飲むのは野蛮人で、ワインを全く飲まないのは無教養な人間だと考えていた。試しに赤玉ポートワインを冷たい水で薄めて飲んだら、風味は変わらずおいしく飲めた。

蒸留酒は当時流行りの錬金術の派生物で、大航海時代に求められていた酒であったこと。腐ることがなくアルコール分が強くて少量で酔えるから、長期間の航海にぴったりだった。

コーヒーは飲まれ始めた当初から、知識階級の飲み物であったこと。今もスターバックスにはインテリを自認する人たちが集まっている。

紅茶。これほど歴史の影の立役者(?)たる飲み物はない。大英帝国発現のエネルギー源となり大中華帝国を崩壊させた。読後に紅茶を飲んだ時、あらためて清涼感があり殺菌作用もある飲み物と実感した。この清涼感ゆえに歴史が大きく動いたのか。

コカ・コーラ。コカの実とコーラの木の成分が入っているからコカ・コーラと命名された。この安易な名前の飲み物は地球上のどこでも飲める商業製品でもある。初めていわゆる途上国を旅したとき、異国の味に慣れなかったけれどコカ・コーラを飲んでほっとしたことがある。どこで飲んでも同じ味なのだ。

この本はトリビアの宝庫でもある。でも、人類の日々の暮らしの歴史をこれほど鮮やかに教えてくれる本は他にないと思う。