2013-03-23

ゼロ・ダーク・サーティ [キャサリン・ビグロウ監督]


2001年9月11日の同時多発テロから2011年5月にオサマ・ビン・ラディン暗殺されるまでの、CIAの捜査を描いた作品。

これは、「裏切りのサーカス」や「アルゴ」や「007」に連なるスパイ映画の一つなのかもしれないけれど、観ていて、本当の主題は組織の中で働く女性なのではないか、と思った。

オサマ・ビン・ラディンの居所を突き止めるための捜査にマヤという女性捜査員が加わる。男性捜査員は捕らえたアルカイダメンバーを拷問して情報を引き出そうとするが、マヤは証言や盗聴会話からオサマ・ビン・ラディンにつながるアルカイダの重要人物を特定し、その居所に迫っていく。彼女の信念が組織を動かし、ついに大統領はオサマ・ビン・ラディンが潜伏していると見られるパキスタンへ軍を派遣する決定を下す。

主役のマヤを演じたジェシカ・チャスティンがインタビューで、自分はこれまで誰かの恋人か妻を演じることが多かったが、この役はこれまでと全く異なる、諜報の最前線で仕事をする自立した女性だった。女優としてそういう女性を演じることができてよかった、と言っていた。

たぶん20世紀ほど女性が職場で格下に見られることは少なくなってきていると思うが、それでもマヤの上司や同僚とのやりとりを見ていて、それはある、と思う場面がいくつもあった。上司からやんわりと提案を却下された時の彼女の台詞に痺れた。「その判断のせいでビン・ラディンを逃がした、という汚名を着ることになってもいいんですか」

ビン・ラディン殺害のシーンは衝撃的。キャサリン・ビグローの前作「ハート・ロッカー」ほどではないけれど、ドキュメンタリータッチに撮影されている。つまり、演出は中立的で、観客の判断に委ねている感じ。

この映画には主人公のマヤだけでなく、CIAの第一線で働く女性が何人も登場する。恋人や妻としてではなく、社会の構成要員としての女性がよく描かれている。もしかしたら、そういう女性を描くためにこの題材が選ばれたのかもしれない、と思った。