2012-09-27

ちはやふる [末次由紀著]


競技カルタの世界を、高校のカルタ部を通して描いている。1巻から17巻まで一気読みした。

主人公の千早は、小学校6年の時に福井からの転校生、新(あらた)を通して競技カルタを知る。幼なじみの太一も加わって3人でカルタの世界に踏み入るが、小学校卒業とともに新は福井に帰り、太一は私立の進学校へ進み、3人は別れ別れになってしまう。しかし、高校で千早と太一が再会。二人はカルタ部を創設し、仲間を増やして再び競技カルタの世界へ。そして新との再会も果たし、千早はクイーンへの道を歩き出す。

競技カルタの世界が圧倒的な迫力で迫ってくる。主人公は千早という、周囲をヤケドさせてしまうほどのカルタへの情熱を持つ天然キャラの美少女。高校選手権だけでなく、一般の大会にもどんどん参加するので、ライバルとなる登場人物が次から次へと現れる。「ちはやふる」の迫力は、脇役のライバルの、ここに至るまでの人生やカルタとのかかわりが、本筋から脱線しない程度に丁寧に描かれているからだと思う。色んな人たちの情熱がページからめらめらと立ち昇ってくるようだ。

千早をめぐる新と太一の対立というか対比は少女漫画の世界。暗めで天才肌の新と、明るいが実は努力家の太一。女性の読者なら、どっちがいいかなー、と心迷うのだけれど、肝心の千早は、天然キャラ爆発で全然心が揺れ動いていない。

天然キャラほど、本人が無意識のうちに人生の条件に恵まれて、どんどん上り詰めて行く、という流れは、ある程度人生経験が積もった読者には、イラっ、とするところはある。でも挫折したり、迷惑かけたり、自分を見つめたり、思いっきり生きている人を見ていると、こちらにも少し元気が湧いてくる感じがする。