2012-09-13

ロスト・シンボル [ダン・ブラウン著]


アメリカ合衆国建国時、ワシントンDC建設に関わったフリーメイソンがDC市内のどこかに隠したと伝えられる"失われしことば"を巡るアドベンチャー。

ラングドン教授は、旧知のスミソニアン協会会長に突然呼び出され、ボストンからワシントンDCへやって来る。指示通りにアメリカ連邦議会議事堂へ赴くが、それは罠で、スミソニアン協会会長を拉致した敵役マラークに、世界征服の鍵となる"失われしことば"を見つけだすよう脅される。手がかりはフリーメイソンに伝わる謎かけ。ラングドンの謎解きに絡んで、フリーメイソンの儀式、歴史、象徴の意味、そして純粋知性科学についてが語られる。

グラハム・ハンコック、ロバート・ボーヴァル共著の「タリズマン」でもワシントンDCはフリーメイソンの思想に基づいて建設されたのだ、と言っているが、「ロスト・シンボル」もその事実(?)に基づいてストーリーが展開している。キーワードは、地下の秘密の場所、ワシントンDCのどこか、古の門、ピラミッド、刻まれたシンボロン。

フリーメイソンと並行するこの作品のもう一つのテーマは純粋知性科学。純粋知性科学とは、人々の思考に重力があり物質界に測定可能な影響を与えることができる、とする科学。そう聞くと超能力とか魔法とか、なにやら胡散臭いエセ科学という印象を受けるが、私自身は、やはり、と納得。私が傾倒している哲学は「心の活動は思考によって現実化する」と言っている。ロスト・シンボルでは、人間の中に神がある、と言っているが、それはまさに「神人冥合」のことなのでは。"神と人間は人の心に従ってきわめて微妙に結びつくようにできている"。

人が神足り得るならば、純粋知性科学の理論を応用すれば世界征服も夢ではない、という理屈になる。たしかに歴史上ある一つの考えが主流になり世界を席巻したことがあるが、それが世界征服につながったことはないのではないか。心の活動を現実化するには無念無想の境地に至ることが前提で、そこに至るのはほんの一握りの人々でしかない。多くの人は無念無想の境地について考えたことすらないではないか。

それに、"みんなちがって、みんないい"、が人間の原理なのではないかと思う。

ところで、この本の前に「イスラームから見た世界史」を読んだので、フリーメイソンはやはりキリスト教をベースにしている、という強い印象を受けた。古代エジプト宗教とキリスト教の融合か。フリーメイソンは様々な宗教を包含するといっているが、伝承の多くはキリスト教の伝承に基づいている。話が逸れてしまうけれど、キリスト教・ユダヤ教の伝承のアブラハム、ヤコブ、ソロモン、イエスの出来事って一体何世紀の出来事なのだろうか。その辺りがいつもあいまいで、漠然としていて、異次元世界な感じがする。このあいまいさが神聖さを高めているのだろうが.....。