2011-08-24

夜明けの街で [東野圭吾著]

アガサ・クリスティっぽい。

アラフォー男が1年契約で職場に来たエキセントリックな派遣社員と不倫の恋に落ちるが、彼女は思春期の頃未解決の殺人事件と関わりがあった、という話。

本来ならドロドロの人間ドラマが中盤までさらっと描かれていて、中盤あたりで過去にあった密室殺人の概要が明らかになる。関係者たちが続々と登場し、主人公のアラフォー男に恋人への不審感を植え付ける。彼女は犯人なのか、どんなトリックが背後にあるのか。

この不倫男の心情が生々しく綴られていて、作者にきっと経験があるのでしょう。それと、男の本音がわかったよ。おいしい洒落た料理を作ったり家の中をこぎれいにしても、だからといって妻を高く評価しないのですね。

主人公の不倫の恋は1年足らず続く。その間悦びに浸ったり罪悪感に苛まれたり感情の起伏が激しい。しかし、この人はラッキーな不倫の恋をしたと思いますよ。あと腐れのない、ね。

人間ドラマも描かれているけれど、そこはさらっと描かれていて、最後に関係者が集まって密室殺人という古典的トリックが明かされるという構成がアガサ・クリスティっぽいと思った。