2010-12-20

失踪した天才少女 [NPR]


Original Title:Barbara Newhall Follett, Disappearing Child Genius

1920年代、13才の時に小説を立て続けに発表し、26才の時に失踪、以来全く行方知れずになっている女性の話。

父親が英語学者だったバーバラ・フォレットは4、5才の時からタイプライターを使い始め、8才で初めて小説を書き、13才で「窓のない家」という小説を出版した。この本は現在では絶版のよう。処女作が出版されるとその年の夏に貨物船に乗り組み、その経験を「ノルマンディへの航海」という作品にして発表。天才少女として当時の出版界にセンセーションを巻き起こした。

しかし、第2作が発表された1週間後、父親が若い女と駆け落ち、母親と2人苦しい生活を送ることになる。父親は彼女にとって教師であり編集者であり、作家活動に欠かせない存在だった。

21才の時大恋愛の末結婚、事務仕事で収入を得る生活を送るが、5年後、夫と大喧嘩した後、財布も持たずに家を飛び出し、それ以来現在まで行方知れずになっている。

彼女が発表した小説はどれも逃避をテーマにした、どことなく怪奇な雰囲気を持つ作品だったとのこと。彼女の失踪はまるで彼女の作品そのままのよう。70年以上行方知れずというのも怪奇だ。

もしこれが2時間ドラマなら、夫が第一容疑者だが、当時捜査はどうなっていたのだろう。

2010-12-18

北北西に進路を取れ [アルフレッド・ヒッチコック監督]


ヒッチコックスタイル満載の教科書のような映画。

ケーリー・グラントがダンディでコミカルで素敵だ。事件に巻き込まれながら飄々と事態に身を任せている。

この映画でケーリー・グラントが巻き込まれたのは国際スパイ事件のようなのだけれど、相手組織も、もちろんアメリカ側の組織についても何一つ明らかにされていない。さらに、ジェームス・メイスンが演じる敵役がどんな情報を持ち出そうとしているのかも。主役と観客は背景の事情を何一つ知らされないままどんどん渦中に突入していく。

これはサスペンスとアクションと展開を楽しむための映画だと思う。最近はあっと驚くどんでん返しというプロットのために、映画の序盤にいろいろ情報が詰め込まれている気がする。消化しきれないうちに映画は進むけど、結局背景事情がなくても観客が楽しんでいるのはサスペンスとアクションと展開なのだ。

背景事情抜きで観客を楽しませ、時代が変わっても何十年も楽しめる映画をつくったヒッチコックは、すごい!!!

2010-12-16

出所者を更生させている元管理職シニア [NPR]


Original Title: Retired Executive Helps Inmates Stay Out Of Jail

ニューヨークの刑務所で出所者を更生させるボランティア活動をしているシニアの話。

シニア社会人に教育関連のボランティアを斡旋するNPOがあり、6年前、化粧品会社で管理職だったゴールドスミス氏が志願したところ、ライカー刑務所を紹介された。

ライカー刑務所の再収監率は6割。しかしゴールドスミス氏がこれまで関わった1500人の出所者の再収監率は5人に1人。

ゴールドスミス氏は出所者に、仕事の面接にはどんな服装でどんな態度で臨むべきかを教えたり、将来就きたい職業があればどんな学校でどんな勉強をすれば実現に近づくかなどの相談に乗っている。

ライカー刑務所の服役者は生まれてからこのかた、社会的に成功した人に会ったことがないし、更生するための手段を知っている人と接することもなかった。ゴールドスミス氏は服役者が初めて出会う、権威を振りかざすことなく彼らを助けようとする成功した社会人なのだ。

この記事が出た時点で74才のゴールドスミス氏は、服役者と自分自身の若い頃が重なって、共通点が多いと感じている。学校を中退したり、会社でいじめに遭ったり、必ずしも順風満帆の人生ではなかった

NPOから派遣されたボランティアだったが、今はゴールドスミス氏自身が更生プログラムを主催しており、7人のスタッフが出所者の更生に携わっている。出所者が仕事を見つけるまではどんな長期間になろうともスタッフは彼らに関わり続けているとのこと。自分は一人ではないという責任感を出所者に与えるから、再収監率低下の大きな要因になっていると思う。

若い人たちは、年長者の生活態度、人生態度を無意識に自分の将来とみなしているのですね。毅然として生きるだけでも社会にポジティブな影響を与えると思う。そして、前向きな気持ちを持っている人には、必ず誰かが手を差しのべてくるということも言えると思う。

2010-12-12

裏窓 [アルフレッド・ヒッチコック監督]


ヒッチコック映画の中で一番好きな映画。

グレース・ケリーが美しい。この映画でも衣装はイディス・ヘッド。グレース・ケリーが身につけている衣装のどれもが素敵で、ラストシーンの赤いブラウスとジーンズですらお洒落だ。裏窓でのグレース・ケリーの衣装をすべて欲しいとずっと思い続けている。

この映画が楽しいのは、窓のこちら側つまり観客側の世界は幸せな世界だからではないかと思う。成功した報道写真家、裕福で美しく社交的なモデル、幸せな結婚生活を続けている看護婦。ところが窓の向こう側の人たちは皆何らかの不幸を抱えている。

子どものいない夫婦、売れない作曲家、孤独なオールドミス、生きるための綱渡りをしているダンサー、そして問題のセールスマン夫婦。

セールスマン夫婦は別として、最後は窓の向こう側の人たちにもひとまずハッピーエンドが用意されているから観客もハッピーな気分で映画を見終わることができる。ハッピーななかのサスペンスだから、毎回飽きずに面白く楽しく観られるのだと思う。

この映画のジェームズ・スチュアートとグレース・ケリーのカップルは、私は好きだな。

2010-12-11

スティング [ジョージ・ロイ・ヒル監督]


ジョージ・ロイ・ヒル監督、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードのトリオの作品。

面白い!騙された!役者の一人一人が素晴らしい。

このドラマの登場人物たちは、ロバート・ショー演じる銀行家を騙すために一致団結して協力し合っているけれども、この映画を制作しているスタッフ、俳優たち自身も、観客を騙すために一致団結して楽しんで協力し合っているように感じる。カタキ役の俳優ですら。作る側の楽しさが観客にも伝わってくる感じ。

この映画でも衣装はイディス・ヘッドだった。娼館のマダムのガウンや娼婦たちのドレス、ポール・ニューマンのランニングシャツにオーバーオールジーンズ。正装した詐欺師たちの衣装。時代が変わっても色褪せないお洒落だ。

画面転換のひとつひとつが凝っている。ページをめくるように変わったり、登場人物の動きに合わせて次のシーンが流れて来たり。

こういうコン・ゲームのチームの面白さは、スティーブン・ソダーバーグ監督の「オーシャンズ11」に引き継がれているなぁ、と思った。

2010-12-07

児童売春から立ち直った少女たち [NPR]


Original Title: Trafficked Teen Girls Describe Life In 'The Game'

FBIは全米で30万人の未成年が売春に関わっていると推定している。カリフォルニアのオークランドで、売春をさせられていた女性2人が更生プログラムで立ち直った話。

2人は仮名で、ダーリーン21才とブリトニー18才。2人とも両親不在の貧困家庭で育った。

ダーリーンは15才の時、18才のボーイフレンドと一緒に家出。母親の恋人に家から追い出されたのだ。ダーリーンの彼氏は優しかったけれど、2人には暮らしていくお金がなく、ボーイフレンドが彼女に紹介した仕事は売春だった。

ブリトニーは15才の時、学校をサボって町を歩いていたところ男たちにさらわれ、レイプ、監禁の末、売春。カルト教団並みの洗脳と薬物で、ブリトニーはヒモから逃げられないように心理的に服従させられていた。

2人が立っていたオークランドの通りを、取材した記者も行っっている。それとわかる少女たちがバス停、通りの角に立ったり、同じブロックを何度も行き来している様子を伝えている。

ダーリーンは銃で撃たれたり、売春で何度も逮捕されるのがいやになり、最後に逮捕された時に更生プログラムに参加することにした。

ブリトニーは妊娠させられ、ヒモの暴力で流産。それでも町に立っていたが、ある日おばさんに出くわして家に連れ戻された。警察が家にやってきて売春で逮捕。この逮捕の時に更生プログラムに参加することにした。

2人は、売春婦はただの女じゃない、誰かの娘であり姪なんだということを知るべきだと言っている。

2人は更生プログラムによってかつての生活から抜け出した。高校を卒業し、カレッジに通い、更生プログラムの団体で働いているが、2人ともハイヒールを履くのに抵抗を感じている。お洒落をしたら昔の自分が他人にわかるのではないかという恐れがあるから。まだ回復途上にあるけれど、お洒落できる時が本当に立ち直った時だと思っている。

2人が育ったのは、十代の女の子たちがお金を持っているボーイフレンドを周囲に自慢しまくるような地区。ネアンデルタール人とホモサピエンスではないけれど、早熟であるために終わりを早めてしまうことはあると思う。

この記事はユース・ラジオが制作。ユース・ラジオはは14~24才の若者向けに、マルチメディア関連の人材を育てることを目的としている。公立学校や更正施設などで、ジャーナリズムの職業訓練などもしているとのこと。

2010-12-05

材料4つのクッキーレシピ [GOOD FOOD]

Original Title: 4-Ingredient Holiday Cookies

色々なタイプのクッキーを4つの材料だけで作るレシピ本の紹介。

風味の強い材料を一つ選んで、あとはクッキーの種に必要な卵、小麦粉などの材料とまぜるだけ、と言っている。

たとえばメープルクッキーは、メープルシュガー、卵白、バター、小麦粉を混ぜ合わせ、クッキングシートに薄く引いて焼くだけ。焼き始めるとすぐにカールしてタイルのようになると言っている。

材料は簡単だけれど、焼く時のコツを心得ておく必要があるよう。低温で急がず焼くのがよいとのこと。

他に、バーボンとチョコレートを使ったクッキーの紹介も。数日、バーボンの香りが持続しているらしい。

聞いているだけで素晴らしいレシピの数々。

明日に向かって撃て [ジョージ・ロイ・ヒル監督]


粋でいなせで、ワイルドでカッコよくて、哀しい映画。

冒頭、ブッチを演じるポール・ニューマンのアップの表情で惹き付けられてしまう。ポール・ニューマン、名優だ。続いてサンダンス・キッドを演じるロバート・レッドフォードの酒場での息詰まるシーン。ロバート・レッドフォード、ハンサムなだけじゃないんだ。

二人が正体のわからない一団に追われるシーンの、アメリカの大自然が素晴らしい。

でも二人は幸せ者だと思う。女ですら二人の絆を揺るがすことができない。信じ合えて、それを言葉にしなくても信じ合えて、それが終わるかもしれないという不安すらない相棒がいる二人は幸せ者だ。

1970年代半ばに制作された映画かと思ったが、1969年制作だった。衣装担当はイディス・ヘッド。キャサリン・ロスのドレスも素敵だったけれど、ブッチとサンダンスの衣装も色褪せないカッコよさだ。

しかし、よく観ているとロバート・レッドフォードを撮る時はいろいろアングルや演出を考えているなぁ、と思った。

2010-12-03

生き残った帝国ビザンティン [井上浩一著〕


バルカンに興味があるので、歴史文化の点で外せないビザンティンについて知るために。

ビザンティンについてよくわかったし、ローマ帝国の末路についても、ギリシア正教についてもよくわかった。バルカンにキリスト教とイスラム教が混在している背景と、同じキリスト教徒の国なのになぜ十字軍がビザンティンに押し入ったかもわかった。

今までビザンティン帝国はスラブ人とトルコ人の国だと思っていたが、実はギリシア人の国だったのですね。

著者は、ビザンティン帝国はローマ帝国の建前を保持しながら、社会構造の変化に合わせて脱皮を繰り返し一千年以上存続し続けたと言っている。領土の拡大縮小が激しいものの、コンスタンティノープルを帝都とする帝国を維持し続けようとした強い意志力がビザンティン人にあったからできたことだと思う。それだけ、コンスタンティノープルが魅力的で求心力を持つ都市だったということか。

トルコ人がビザンティンを侵略した時の合い言葉「町へ(イス・テン・ポリン)」がイスタンブールに変わり、コンスタンティノープルはトルコ人の都になったとのこと。当時「都」といったらコンスタンティノープルのことを指していた。

「銃・病原菌・鉄」を読んだ後なので、人類の発展途上の出来事という観点からもビザンティン帝国の興亡を読んだ。人類文明発祥の地に近かったからビザンティンは他の地域より技術や文化を早く発展させてきたわけだけれど、一千年続いて結局滅んでしまった。ビザンティンを継承したトルコという国も世界の政治経済の一線に立っているとはいいがたい。

コンスタンティノープルを偲びに、イスタンブールへ行ってみたいと思う。

2010-11-28

映画館で何を食べるか [GOOD FOOD]


Original Title: Movie Theater Etiquette

食のエチケットについてのコラムニストと映画館での食べ物について話している。

コラムニストは映画館には家からスナックを持ち込むと言っている。映画館は外部で買った食べ物を持ち込まないように、と言っているが、なんせ高い。

映画館の食べ物が高いのは、映画館が映画で収入を得ることが難しくなっているから。まずテレビの登場で映画館の観客数が減ったし、今はDVDと大画面テレビでますます減っている。本業からの収入を期待できないので、副業の食べ物で収支を合わせようとしているとのこと。

それにしても、映画を観ながらの食べ物はどうしても限られてしまう。音がしないこと、臭いがしないこと、となるとやっぱりソフトドリンクと紙容器に入ったポップコーンに尽きるよう。番組ホストは、映画館で買ったポップコーンに家から持って来たレーズンを入れて食べていると言っている。しょっぱさと甘さが混在して、しかも音も臭いもしなくていいアイデア。

音がしないレジ袋、包装用紙に入った食べ物なら許せるが。なぜレジ袋はあんなにうるさい音を立てるのか。

2010-11-27

1足につき1足寄付する靴屋 [NPR]


Original Title: 'Soul Mates': Shoe Entrepreneur Finds Love In Giving

お客が靴を1足買うごとに途上国へ靴を1足寄付する靴屋の話。創業者はこの記事が出た時点でまだ32才。すでに5つの事業を興し、スミソニアン財団から賞も受けているいわゆる社会起業家。

創業者のマイコスキー氏は、アルゼンチン側のブラジルとの国境の村を旅している時にこの事業を考えついた。裸足で暮らしている子どもたちに靴をあげたい。子どもたちは、水汲みの往復も学校へ行くのも裸足で暮らしている。靴は生活に劇的に変化をもたらすはず。

それで、マイコスキー氏はアルゼンチンの伝統的な履き物、アルパルガータの職人に弟子入りして、靴作りを始めた。アルパルガータはエスパドリュみたいな靴で、麻ロープの靴底に帆布で甲の部分を覆ったもの。

ロサンゼルスに戻って、お客が靴を一足買う毎にアルゼンチンの村の子へ靴を1足寄付する、という靴屋を起業。始めは250足を目標にしていたが、今は中南米諸国、南アフリカ、エチオピア、ハイチへも寄付するまでに拡大している。

マイコスキー氏のトムズという靴屋の靴はアルパルガータの形をしているけれど、靴底はゴムで素材はもっと洗練されている。値段は50ドル位から。50ドルで洒落た靴を買えてしかも寄付もできるというのは、国際協力に関心のある人たちには魅力的だと思う。クリントン元大統領もトムズの靴をよく買っているとのこと。

ビジネススキルを社会改善に役立てようというこういう社会企業家が増えているよう。靴屋といえばザッポスが今話題になっているが、トムズもお客にワオ!を提供していますよね。

2010-11-26

需要が押し上げるコーヒー豆の値段 [NPR]


Original Title: Amid Rising Demand, Price Of Coffee Beans Soars

コーヒーの生豆の値段がこの1年で50%以上値上がりしているという話。要因はいくつかある。

BRICsといった新興国での消費が増加しているのもその一つ。ブラジルは世界一のコーヒー豆生産国だったけれど、すぐに米国以上の消費国になりそうな勢い。なのにコーヒーの植樹は増えていない。たとえコーヒーの植樹が増えているとしても、収穫できるまで育つのに5年はかかる。

インドでの消費も増えている。たしかに、インドにはインドの「スターバックス」といえるバリスタというコーヒーショップチェーンがあり、小金持ちのスノッブなインド人にとってバリスタでコーヒーを飲むのは一種のお洒落のようだ。

中国の中流化が進めば、中国人の食の西洋化がすすみ、コーヒーの消費はうなぎ上りになるはず。

需要が高まれば価格が上がるわけで、そこに目を付けた先物取引も盛んになっている。こうした先物取引が価格を押し上げているもう一つの要因。

コーヒーの値段が上がれば、人々はスターバックスのようなコーヒーショップでコーヒーを買うのを控えるようになるし、買ってもショートサイズにするでしょうと言っている。コーヒーショップ業界にとっては痛手。私も職場ではスターバックスでコーヒーを買わずに、自分でドリップして淹れている。

2010-11-22

闇の傀儡師 [藤沢周平著]


藤沢周平作品を初めて読んだ。

将軍徳川家治の時代に、世継ぎをめぐって暗躍する謎の組織八嶽党と老中田沼そして陰の黒幕に対して、浪人となった若い侍が活躍する冒険時代小説。

主人公の若い侍が八嶽党を壊滅させるまで戦うのかと思ったが、対決は中盤あたりで一旦中締め(?)となり、やがて八嶽党は敵役でもなくなってしまう。

八嶽党にいる剣客と主人公との最初の対決では、肩に矢傷を負った主人公を慮って剣客は勝負をおあずけにする。その反面、主人公が一緒に働く隠密と八嶽党との対決は容赦ない暗殺合戦。


剣の果たし合いの場面は緊張感があって、息を詰めて読んでしまった。

池波正太郎作品を読み馴れていたので、仇が仇でなくなってしまう展開がちょっと不思議な感じがした。

2010-11-21

ノラ七面鳥騒動 [NPR]


Original title: Charm Gone, Town Kicks Out Free-Ranging Turkeys

ワシントン州のピュージェットサウンドのある町での七面鳥騒動の話。

2004年春、とある民家の裏庭に七面鳥のペアがやってきた。お互いに毛づくろいしたりしてかわいらしいのですぐに町の人気者に。この七面鳥夫婦は15羽のこどもを産み、そのこどもたちがこどもを生み、町の至るところで七面鳥を見かけるようになった。七面鳥目当てにこの町に観光客が来るようになって、市長は七面鳥を公式に町の鳥として認定した。

ところが七面鳥はどんどん増えて庭を荒らしたり、衛生上の不安も。町議会は、罠を仕掛けて七面鳥の群れを取り除くことにしたが、捕まえた七面鳥は市の条例で食用にすることができず、結局クリスマスツリー農場に送られた。でも町にはまだまだ野良七面鳥が徘徊しているとのこと。

七面鳥を捕って食べていいことにしたら町の評判を落とすし、七面鳥を野放しにしたら町は七面鳥に占領されるだろうし。悲喜劇ですね。

2010-11-17

オクテのホモサピエンスが生き残ったワケ [NPR]


Original title: Growing Slowly, Humans Outsmarted Neanderthals

ネアンデルタール人とホモサピエンスの運命の分かれ目となったのは、ホモサピエンスの方が成長が遅かったからという話。

3万年前、ネアンデルタール人とホモサピエンスは人類の祖先として共存していたし、交配さえあった。ネアンデルタール人は野蛮人というイメージがあるけれども、実はホモサピエンス同様の道具を使い、脳はホモサピエンスより大きかった。それなのになぜネアンデルタール人は滅んでホモサピエンスが残ったのか。

決定的な違いは、ホモサピエンスの方が成長が遅く長生きしたから。脳の成熟に時間がかかるために成人するまでの教育期間が長く、このことがホモサピエンスの社会構造をより複雑にさせ、恐らくより知的にさせた。

ネアンデルタール人は成長が早く早死にしたので、あまり多くのことを学ぶことができなかった。

思春期にオクテだとなんだか引け目を感じるが、ネアンデルタール人とホモサピエンスのことを考えると、成長に時間をかけている間にどれだけのことを吸収するかで、人生は変わってくると思う。

2010-11-14

ハリー・ポッター料理本 [GOOD FOOD]


Original Title: Eating with Harry Potter

ハリー・ポッターファンの料理研究家が、非公式のハリー・ポッター料理本を著わした。150もの料理のレシピが載っている。

原作には様々な料理が登場して、読んでいるだけでお腹が空いてくるらしい。でもどんな材料を使った料理なのかはよくわからないから、想像でレシピを作ったとのこと。

例えば、ハリーの好物のトリクルタルトは、糖蜜のパイではないか、とか。

でも本に登場する料理の殆どはイギリスの家庭料理らしい。

2010-11-12

謎の蔵書票 [ロス・キング著]


17世紀のロンドンを舞台に、貴族の未亡人から稀覯本探しを依頼された書籍商が主人公のミステリ。

書籍商が一人称で語る1660年のロンドンでの出来事と、捜索を依頼された稀覯本「ヘルメス文書」にまつわる1620年のボヘミアでの出来事が交互に描かれている。

作品が描いているのは、ガリレオ、コペルニクスなどが天文学を解き明かし、「科学」という新しい考え方が人々を魅了し始めた時代。

書籍商が「ヘルメス文書」を探す過程で、エジプトの魔術師や、ギリシアの哲人たち、錬金術師の著作が次々と現れ、聖書が唱える自然原理とは別の世界にこの時代の人々が魅了されていることが描かれている。特に航海術の進歩は、国家の存亡にかかわる重大機密事項だったようだ。

陰鬱で博学の作品なのだけれど、話が大きく展開し登場人物が謎に迫りそうになると、ふいに場面が変わっておあずけをくってしまう。後半はそういうおあずけがやたらと多かったような気がする。

「薔薇の名前」と「アッシャー家の崩壊」をもじっているのかな。稀覯本が著わしている学問についての描写が多かったし、最後は依頼人の屋敷が壊れた配水管のせいで崩れ落ちる。

東欧でカソリックとプロテスタントの争いがあったというのを初めて知った。またバルカンの歴史について興味が湧いてきたので、バルカン関連の本をまた読もうと思う。

2010-11-07

庭のかたつむりを食らう [GOOD FOOD]


Original Title: Eating Snails

その昔、フランス料理店が輸入したかたつむりが逃げて、あちこちで繁殖しているとのこと。庭にいるかたつむりをつかまえて自宅でエスカルゴを作って食べた人の話。

なんと庭で50匹つかまえたとのこと。カタツムリを料理するにあたって、100年前に書かれたフランス料理の本、エスコフィエを参考にし、獲ったカタツムリをバケツに入れてしばらくオートミールを食べさせて毒抜きした。

カタツムリは意外に逃げ足が早いから、バケツには厳重に封をしなければならなかった。

エスカルゴは、お湯を沸かした鍋にカタツムリを入れて茹で、ニンニクとバターとパセリをのせてオーブンで焼いて作る。50個もあったのに、あっという間になくなってしまった位おいしかったらしい。

50匹獲った後、庭にまったくかたつむりがいなくなってしまい、もしかしたらかたつむりの間で「あそこの庭は危険だ」という情報が飛びかっていたのかも、と言っている。最近またかたつむりが現れるようになったので、カタツムリ料理を楽しんでいる。トマトソースがイケる、とのこと。食感はタコというよりマッシュルームのようと言っている。

2010-11-05

国境をまたぐ密輸トンネル [NPR]


Original title: U.S. Uncovers Major Cross-Border Drug Tunnel

カリフォルニア州南端の町サンディエゴはメキシコと国境を接しているが、サンディエゴとメキシコ側の国境の町ティファナの間に600ヤード(約550メートル)のトンネルを掘ってマリファナを密輸していた話。

入国関税局がサンディエゴの倉庫を出発したトラックを追跡しメキシコ国境で停止させたところ、10トンのマリファナが見つかった。トラックが出発した倉庫を捜索すると、床に造られた四角い穴の中にさらに20トンのマリファナが見つかった。この穴はトンネルになっていてなんとメキシコ側の国境の町ティファナの倉庫までつながっていた。

トンネルには簡単な換気装置とレールが設置されていたとのこと。映画「大脱走」を地で行くかのようなトンネルだ。「大脱走」も実話が元になっていますけれど。

2010-11-03

眺めのいい部屋 [ジェイムズ・アイヴォリィ監督]


ヒロインより若い人たちを取り巻く年上の人たちが魅力的だ。マギー・スミス(ハリー・ポッター)、ジュディ・デンチ(007)、デンホルム・エリオット(インディ・ジョーンズ)、サイモン・キャロウ(アマデウス)が、人生はやっぱり面白いものだというメッセージをヒロインと観客に伝えている。

1985年の作品。ヒロインを演じるヘレナ・ボナム・カーターがかわいい。ダニエル・デイルイスが伊達男をコミカルに演じていておかしい。ジュリアン・サンズ、すごいいい男だ。池の水浴びのシーンが嬉し恥ずかし。大喜びの人たちがいるのではないかと思う。

旅先で知り合った男性と恋に落ちる、というのは古今東西の女性の夢なのですね。

2010-10-31

幽霊レストランとファーマーズマーケットの産地偽装 [GOOD FOOD]


Original Title: Farmers Market Integrity

ファーマーズマーケットにおける偽装表示の問題について取り上げている。

地元産だったら高くても購入する、という消費者心理につけこんで、ファーマーズマーケットで輸入野菜を高値で販売している偽装店が増えているとのこと。

10年前はファーマーズマーケットの出店舗のうち十分の一が偽装していたが、今は約半分が偽装している。

スーパーで売っている輸入物よりは高値だが、純正地元産よりは安値なので、純正地元産を販売している生産者は採算がとれないとファーマーズマーケットから撤退している。そのため偽装店がますます増えている。

いずれにしろ地元農家の生産量が減ってきていることはたしか。ファーマーズマーケットに買いに来る人たちは増えているのに、供給は僅かしかないのだ。

地元産の農作物を消費するのが最良の生活スタイルだと思うが、郊外の農地はどんどん減ってきている。後継者の問題、税金の問題があると思うが、郊外の農地を守らなくては、と切実に思っている。グーグルアースで見ると、農地の部分は美しい模様になっている。


Original Title: Haunted LA Restaurants

ハロウィーンが近いので、お化け話。

ロサンゼルスには意外に幽霊が出るレストランが多いよう。ただ、店のスタッフは知っているけれど、お客にはあまり知られていないらしい。

ここで紹介されているのは、19世紀に農家だった家をレストランにした店。幽霊が二人(?)出る。

一人は、1920年代に農家をレストランに改造した初代オーナーの女性で、食堂や厨房を徘徊している。もう一人は店の2階に出る。2階は農家だった当時をそのまま残していて、寝室になっているのだが、そこに若い女性が出るとのこと。若い女性の幽霊がこの農家とどういう関係なのかは不明。

それから、消防署だった建物を利用しているレストランには、影が動く現象が見られるとのこと。

番組ホストが幽霊レストランについてインタビューしている相手は、ロサンゼルス市内のスターバックスにいて携帯電話かスカイプで話しているとのことだけれど、雑音が入るし音声が途切れるし、変な人の声も背後に聞こえる。幽霊話だから効果を狙ったのだろうか。

2010-10-30

銃・病原菌・鉄(下) [ジャレド・ダイアモンド著]


面白い!これこそが本を読む楽しさ面白さだと思う。

著者は、地球上の各大陸で文明の進展が異なるのは、そこに住む人種の優劣のせいではなく、たまたま食料生産が可能な土地に居合わせた人たちが先にスタートを切ったからに過ぎない、と言っている。

上巻を読んだ時にも思ったが、人類社会のあり方はこの地球に密接に結びついている。地球環境によって人間は生かされ、適応しようとして文明を発展させてきた。地球環境がちょっとでも異なっていたら世界は今と全く違ったものになっていたに違いない。

それから、紀元前と西暦で歴史を考えるのがいかにせせこましいかということも考えさせられた。紀元前は人間の歴史以前、という見方に何となくさせられているが、こうして人類の歩みを振り返ってみると、キリスト誕生はたった2000年前のことだ。キリスト教の価値観は比較的新しい若いものだといえるのではないか。イスラム教はもっと新しいし。それゆえに時代に合っている?

この本を読んで、人類の未来について色々考えさせられるが、強く思ったのは食料生産についておろそかにできない、ということ。食料生産が文明の始まりのきっかけになったということは、食料生産なくして人類社会は成り立たないということではないか。農業政策にもっと真剣に取り組まなければ。

それから、先進国であろうと途上国であろうと、現在"問題"とされていることはすべて、"発展途上"の問題でしかない、という見方を得た。

著者は最後に中国と欧州について比較している。同じような条件でほぼ同時期にスタートを切ったのに、なぜ欧州の方が中国より優位に立つことになったのか。やはり雑多である方が強いということだと思う。

この本を読んで、ニューギニアにすごく行きたくなった。

2010-10-16

雨飾山


北アルプスの雨飾山(あまかざりやま)を、紅葉を楽しみながら登ってきました。

10月15日午後、スーパーあずさで松本へ。割と空いていて、乗客はビジネスマンばかりでした。松本から大糸線に乗り換えて南小谷(みなみおたり)へ。大糸線の乗客は高校生が多かったです。

南小谷ではペンション・フォークテイルに宿泊。山の中なのに夕食は海の幸でした。ここから日本海までは車で1時間とのこと。オーナーによると、晴天なら雨飾山の頂上から日本海の海岸線が見られるそうです。明日の登山ガイドはオーナーが務めてくれます。


翌16日、午前7時前にペンションを車で出発。雨飾山の登山口に着いたのは午前7時40分頃でした。

登山口からしばらくは湿地帯の木道を歩きます。木道脇の水たまりは澄んでいてイワナが泳いでいるのが見えました。

湿地帯が終わるといきなり傾斜40度位の登り。ブナ平と呼ばれる平地で一休み。また登りが続きます。頂上までの行程半分位の所にある荒菅沢(あらすげさわ)でまた一休み。荒菅沢を望む斜面は紅葉の素晴らしい景色でした。沢を流れる渓流の水は飲む事ができます。冷たくておいしかった。


荒菅沢を過ぎると、狭い尾根道で、岩壁にかけられたはしごを上る箇所もあります。登る人下りる人がすれ違うためにお互い待つこともしばしば。

頂上が見えてきた辺りは笹平と呼ばれる平地。群生している熊笹(?)を突っ切るように作られた通り道を歩いていきます。


11時半頃頂上に到着。頂上は狭く、すでに何十人もの人たちが昼食をとっていました。私たちも何とか場所を見つけて昼食。オーナーにもらったインスタントみそ汁のおいしかったこと。

12時半頃下山開始。ガスが出て来て、下りはあまり景色を楽しむことはできませんでした。頂上から日本海を望む事もできなかったのです。


午後4時頃登山口に到着。帰りの列車まで時間があるので、オーナーに露天風呂に連れて行ってもらいました。そこは本当の露天風呂で、屋根もなく、脱衣場には棚があるだけ。洗い場には蛇口がなくてケロリンの桶がいくつかあるだけなのです。しかも入浴料は寸志。

午後5時43分南小谷発の大糸線の終電に乗って、帰宅の途につきました。

2010-10-15

白神こだま酵母のお米パン−ノングルテンでふんわりやわらか− [大塚せつ子著]


米粉でおいしいパンを作るための本。

ごはんや野菜をすり下ろしたものでつくる"のり"を用いて、ふんわりやわらかな米粉パンを作ることが可能になったとのこと。

しかし、発酵させるのに30〜36℃を維持しなければならず、そのための装置も作らなければならない。装置はセラミックボールとタッパーで安価にできるのだけれど、発酵中ずっと温度を調節し続けるのは素人にはかなり面倒だ。

小麦粉アレルギーの人か、米粉パンを品目に加えたいパン屋さん向けの本だった。

2010-10-14

スパイだったスパイ小説家たち [アンソニー・マスターズ著]


スパイだったスパイ小説家について、本人たちのスパイとしての活動が作品にどう反映されているかについて解説している本。

ジョン・バカン、サマセット・モーム、グレアム・グリーン、イアン・フレミング、ジョン・ル・カレ。全員、本人が小説の主人公でもおかしくない興味深い人たちだ。

この本の筆頭を飾るのは、アースキン・チルダースという20世紀初頭の小説家で、恐らくイギリス初のスパイ小説を書いた人。スパイではなかったけれど、作品がイギリス軍の情報機関に影響を与えた。母親がアイルランド人だったので、アイルランド独立運動に加わって処刑された。この人の章を読んで、ドイツのフリージア諸島に行ってみたくなった。

ジョン・バカンはスパイというより、小説家としての成功を買われて情報局の広報担当の上級管理職に就いていた。でもバカン作品の主人公たちは、情報部時代に知り合った軍人がモデルになっているらしい。

サマセット・モームは、本人自身がまるでジョン・ル・カレが描く哀愁のスパイだ。報酬のないスパイとして働いていたが、自分の経験をそのまま作品に書いているらしい。今までモームを文芸作家と思って敬遠していたが、読んでみようと思う。

グレアム・グリーンは、20世紀の有名スパイ、キム・フィルビーの部下だったというのに驚いた。南アフリカのジャングルに駐在していた時から小説を書き始めたとのこと。MI6を辞めた3年後、「第三の男」のシナリオを書いている。ウィーンでシナリオのための取材中に地下水道のことを知り、映画に取り入れたらしい。

イアン・フレミングは、海軍情報部長の専属アシスタントとして奇想天外なアイデアをいくつも出していたとのこと。007シリーズの奇想天外な展開はこの時から作り出されていたのか。1945年に退職し、1952年に「カジノ・ロワイヤル」を刊行した。

ジョン・ル・カレ。この人が一番興味深い人物。実の父親は詐欺師で、父親が死ぬまでその素行に悩まされ続けていた。しかも父親が詐欺師だということを隠すために本当の生活を偽らなければならなかった、というのが生まれながらのスパイ修行になってしまっていたという。全てのル・カレ作品の主人公といえるジョージ・スマイリーは、ル・カレにとっての理想の父親像でもあったのだ。ル・カレはMI5とMI6の両方で働いているので、情報機関について知り抜いているといえるが、その描いている世界はかなり暗い。情報機関の上層部は、実際はこんなに暗くない、と反発しているらしい。

原著は13人のスパイ小説家を取り上げているが、日本語版は日本で作品が刊行されている作家と、ウォーターゲート事件に関わっていた元CIAの作家の7人の章を収録している。

2010-10-06

アラバマ物語[ハーパー・リー著]


心に深く残る作品。

アラバマ州の架空の町を舞台に、第二次世界大戦前のアメリカ南部の町の三年間を描いている。語り手は、弁護士一家の当時6才の娘。学校に上がって社会と接するようになりはじめた女の子の生活と、父親が弁護することになった黒人の暴行事件にまつわる事柄が描かれている。

映画化され、主人公の父親の弁護士をグレゴリー・ペックが演じた。本に映画のスチル写真のページがあり、それを見てからは、父親をグレゴリー・ペックのイメージで読んでいた。グレゴリー・ペックをイメージして作品が書かれたのではないかと思うくらいだ。

人生、社会、人間のあらゆることが描かれている。子どもから少女に変わっていく主人公、少年から男に変わっていく主人公の兄、非難されようとも自分の信念を貫く父親。差別に苦しみながらも生きることを楽しんでいる黒人たち。貧しさと無知によって孤独な生活を送る若い白人女。プライドゆえに孤独な老女。世間のしがらみから逃げている引きこもりの男。農民の生活。南部の白人女性の傲慢さ。

描かれているのは80年近く昔のことになるけれど、アメリカ社会の現在にも当てはまることが多い。だからこの本は発行され続け、読者を引きつけている。

NPRのStory of the dayで、「To kill a mockingbird(物まね鳥を殺すのは)」に関連する記事があったので読むことに。「To kill a mockingbird」が名作だということは知っていたが、本の表紙を見て「あの本だったのか」とちょっと驚いた。日本語版のタイトルは「アラバマ物語」。雑誌「暮しの手帖」の巻末に暮しの手帖社商品の広告が載っているのだけれど、そこに「アラバマ物語」も必ず載っていた。今までずっとこの広告を見ていたのに、それが「To kill a mockingbird」の日本語翻訳だとは全然気づかなかった。

作者のハーパー・リーはこの作品でピューリッツァ賞を受賞したが、他には作品を書いていない。アメリカ南部を舞台にした名作には「風と共に去りぬ」があるが、作者のマーガレット・ミッチェルも、他には作品を書いていない。

2010-10-03

虫を食べる [GOOD FOOD]


Original Title: Critter Fritters

虫を食べている人類学者の話。声からするとまだ30代前半の若い女性。10年前にインターンで行ったメキシコで食べたのが始まりで、それからよく食べるようになったとのこと。

この人が食べているのは、コオロギ、イモムシ、サソリの3種類。コオロギはタンパク質、カルシウム、鉄分が含まれていてまったりした味わい、イモムシは脂肪分が多く、フレンチフライのような食感、サソリは高タンパク質低脂肪でカニのような味とのこと。

世界の人口80%は虫を食べているから、虫を食べない欧米人の方が「妙な人たち」ということになる。たしかに、日本でもハチノコやイナゴを食べている。イナゴの佃煮は脂がのった小海老といった感じでおいしい。韓国でも小さなイモムシを煮たものをよく屋台で売っている。

番組にも自家製虫スナックを持って来たようで、作り方を話している。イモムシはサンディエゴの虫農場から購入している。虫農場は、釣りエサや爬虫類ペットのエサとしてイモムシを生産(?)している。届いたイモムシを冷蔵庫に入れて殺し、それをオーブンに入れて加熱、フライパンに移して塩、砂糖、ワサビパウダーで味付けして出来上がり。

環境を考えると、虫はこれからのタンパク質源になるかもしれない。

2010-09-20

式根島・新島

9月18日から20日まで、式根島と新島を旅してきました。

9月17日(金)の深夜11時に竹芝桟橋からさるびあ丸に乗船、翌18日朝8時25分に式根島着。

民宿に荷物を置いた後、レンタサイクルで島内を回りました。式根島は約4平方キロ住民500人の小さな島ですが、海岸、森、温泉に恵まれた魅力的な島です。

小さな入り江の泊海岸で泳いだり、森の中の神社を参拝したり、海中温泉に入ったり、盛りだくさんに遊びました。

島の西側はハイキングコースになっているようですが、そちらに行く時間はなく残念。次回来る時は、島の西側を歩くつもりです。

式根島は、穏やかで幸せな場所という印象でした。

19日朝、式根島から連絡船で新島へ。二つの島は連絡船でほんの10分程度しか離れていません。

民宿に荷物を置いて、レンタカーで若郷という村へ行きました。若郷は島の南にあり、そこまでは長ーいトンネルを抜けていきます。

若郷から戻って、島の北側にある向山の展望台へ。

新島にはコーガ石と呼ばれる鉱石があり、これを砕いて加熱すると、薄緑色のガラスになります。向山はコーガ石の採掘場でもあります。

展望台からは新島の海岸線、式根島、その向こうの神津島まで見渡せました。

しかし私は式根島で張り切りすぎたせいで疲れとともに頭痛が。民宿に戻って夕方まで休みました。


旅行3日目の20日は、出発までの間、羽伏浦(はぶしうら)海岸へ行ったり、十三社(じゅうさんしゃ)という神社を参拝したりしました。式根島も新島も、お稲荷さんの祠が石造りなのが特徴的でした。

午前11時25分にさるびあ丸で新島を出発。午後6時に竹芝桟橋に帰り着きました。

新島からの乗船客はサーファーが多く、デッキのサーフボード置き場には何十枚ものサーフボードが置かれていました。そういえば、式根島で下船した人たちの中に外国人がかなりいたのは意外でした。

旅行中は好天に恵まれ、9月中旬というのに気温は30度を超え、海水浴も楽しめました。

旅行から戻ったら急に涼しくなり、次の週末はいきなり気温が20度前後に。島で最後の夏を楽しむことができました。

2010-09-16

死体が語る歴史[フィリップ・シャルリエ著]


歴史上の人物の遺骸を検死して判明した事柄について書いている。死体について語っているのだが、その人が生きていた時の状況が鮮やかに描かれていて、不思議な感じ。

ダウン症は先史時代からあったとか、回虫病が進行すると鼻から回虫が出てきたとか、興味深い事実を知ることができた。

三銃士の登場人物でもあるリシュリュー枢機卿、アンヌ・ドートリッシュ妃のことも書かれていて興味深かった。リシュリュー卿が死ぬと顔面の皮膚を剥いで遺体とは別に保存した。また、アンヌ王妃は乳ガンで死んだとのこと。

フランスでは王族が死ぬと心臓だけを取り出して別に保管しておいたという。でもフランス革命で多くの王族の遺骸や心臓が破壊されたり紛失したので、古病理学としては痛手だと言っている。

作者はフランス人の古病理学者で文学博士。古病理学の分野では第一人者のようなのだが、1977年生まれとまだ若い。検死で判明した情報によって、歴史上の論争が解決に導びかれたことも多々あるよう。

2010-09-08

ラーマーヤナ [エリザベス・シーガー著]


インド神話のラーマーヤナをわかりやすく、簡潔にまとめた本。

タイやインドネシアなどでも、壁画や人形劇の題材となっている。この話を知っていれば、東南アジアの文化もより楽しめるというもの。

ラーヴァナという悪の大王を倒すため、ヴィシュヌ神がラーマ王子としてこの世に生まれてくる。ラーマは正義の王子として名を馳せるが、父王の第三王妃の策略によって14年間国外へ追放され、美しい奥方シータ姫と共に各地を行脚する。シータの美しさを知った悪の大王ラーヴァナはラーマからシータを奪い、自国ランカーへ連れ去ってしまう。

シータを奪回しようとするラーマに猿王国が加勢。猿王国の大臣であり戦士であるハヌマーンの活躍によってラーマ王子はラーヴァナを打ち倒し、シータ姫を救い出し、物語はハッピーエンドを迎える。

面白い。それにしてもこういう昔話には、わかりきっているのにウソをついたり、言いつけを守らなかったりして、自分自身や主人公を困難に陥れるという筋がよくある。読んでいて、バカだね、と思うけれど、そうでないと"お話し"にならないわけで、実際の人生もバカだね、ということがあった方が面白いのかもしれない。

2007年12月から2008年1月にかけて行ったインドの旅行記を書いていて、どうしてもラーマーヤナについて知らなければならなくなり、読んだ。

9月中もインド旅行記にかかりきりで、ブログの方が疎かになってしまった。おかげさまでインド旅行記は全編完成。写真だけでも見てください。

2010-09-07

マイルズになっていくメーガン [NPR]


Original title: Becoming Miles: The Journey Of Changing Sexes

性同一性障害のメーガンという女性がマイルズという男性になっていく過程を追った話。

メーガンは手術に向けての治療を受け始めてから声の日記を録り始める。夜中に歩きながら自分の思い、考えなどを話している。なぜ録音、と思ったが、治療が進むにつれて彼女(彼)の声がどんどん変化していくのがよくわかる。手術を受けて完全にマイルズになった声は、男性の声になっていた。とても明るい声の男性に。

性同一性障害であること、手術を受けることをマイルズは両親に手紙で打ち明けている。母親は、「我が子は死んだわけではないし、私たちの関係は変わらない」と言っているが、父親は「自分が知っているあの子はいなくなってしまった」と悲しんでいる。でも両親は「いつも愛している。これまでもずっと愛していたし、これからもずっと愛してる」と言っている。

本当の自分が親を悲しませることになり、でも本当の自分としてより良く生きたい葛藤は誰にもあると思う。親は我が子を自分の分身と思っているかもしれないけれど、逆を考えてみれば親を自分の分身とは思わないわけで。どのような形であれお互いを思いやっていれば、それでいいのではないだろうか。

2010-09-04

アマデウス [ミロス・フォアマン監督]


音楽と街が素晴らしい。もちろん俳優も素晴らしい。

チェコの街が、当時のウィーンをよく演じている。1984年制作。当時はまだ冷戦中だったけれど、今振り返るとすでに終わりが始まっていたのがわかる。でなければ、東側の国の首都でアメリカ映画の製作に協力するはずがなかったろうから。

オペラのシーンがとりわけ印象に残る。オペラ歌手役の俳優と実際に歌っている歌手のダブルキャストだった。貴族向けのオペラと庶民向けのオペラでは、舞台装置が異なるし、観客の衣装と化粧も異なっている。画面に現れているすべてが凝っている。

モーツァルトの生活はもちろん脚色されているだろうし、サリエリとの関わりがどうだったのかはわからない。でも、天才ミュージシャンの生活って古今を問わないようだ。それともピータ・シェーファーが、現代のミュージシャンから着想を得てモーツァルトをこのように描いたのか。

ディレクターズカット版で長いが、モーツァルトの音楽を楽しめる。見る度に、ラストのモーツァルトのお葬式にはショックを受ける。

2010-08-22

カサブランカ [マイケル・カーティズ監督]


ハンフリー・ボガード、カッコよい。カッコよさが全く自然だ。だからみんな真似したがるのか。

ラストの別れのシーン。バーグマンが「あなたはどうするの?What about you?」「I have Paris....パリの思い出がある」涙がどーっと流れた。カッコよすぎる、切なすぎる。映画史上最も泣かせる男だ。

カサブランカはセリフが聞きやすく、正しい英語が話されている。セリフを全部覚えたら、日常英会話に全く不自由しないと思う。

シナリオ本を買ったらラストのセリフはこうだった。
"But, what about us?" "We'll always have Paris."

1943年制作。戦意高揚映画として制作されたと言われている。一緒に見た母は「やっぱり戦争はいやだと思った」と言った。

2010-08-20

第三の男 [キャロル・リード監督]


カッコいい映画だ。グレアム・グリーンが脚本を書いている。キャロル・リード監督の演出がクール。この映画の演出をみんなが真似するのも道理だ。全てのカットがカッコいい。

登場人物も全員クール。ラストシーンの佇むジョセフ・コットン、冷酷そうで人情がある大佐、職務に忠実で大らかな軍曹、時代に翻弄される美女。

オーソン・ウェルズ、男前だ。二枚目でないけれど、憎めないユーモアと冷たさが共存する魅力的な人物だ。恋人が彼を忘れられないのも無理はない。ふてぶてしさとみっともなさ。

オーソン・ウェルズの顔に明かりが当たるシーン。いつも車のライトが当たって顔が浮かび上がると思い込んでいるのだけれど、窓からの明かりなんだ。このオーストリア人のお節介さもそれまでの話の流れで自然に見える。そういう演出をしているからだ。

1949年制作。戦後すぐのウィーンだからこその怪しげで妖しいストーリーだ。

2010-08-17

銃・病原菌・鉄 (上) [ジャレド・ダイアモンド著]


大変興味深く、面白い、考えさせる本。朝日新聞が選んだゼロ年代の50冊の第1位になった本。

征服する国と侵略される国は、なぜ立場が逆転しなかったのか。なぜアフリカ諸国がヨーロッパ諸国を植民地化するという歴史のシナリオにならなかったのか、その背景を探っている。

今まで著者が提供している観点から歴史を眺めることはなかった。上巻を読んだだけだが、ここで語っているのは歴史の流れではない。地球の環境と人類の行動を結びつけて歴史を考えている。

なぜ人類社会は発展していったのか。この本で言っていることを簡単にまとめることはできないけれど、農業に適した土地に農業に適した動植物が生息していて、農業文化の伝達に適した地形であったことが大きな要因のようだ。

この本を読んで、日本が明治維新で"異国から日本を守った"ことはすごい偉業なんだとわかった。

とても印象に残っているのは、狩猟採集生活は人類が何万年と続けて来た伝統的生活様式だけれど、この数十年のうちにこの生活様式は完全になくなってしまうだろう、ということ。

狩猟採集生活社会の方が穏健で、定着農業生活社会の方が攻撃的だという見方にも驚かされた。たしかに縄文人と弥生人を考えてもあてはまると思う。

下巻を近々読む予定。

2010-08-15

白馬八方池


長野県白馬村の八方池へ行ってきました。

14日土曜日、午後10時に新宿を夜行バスで出発、翌15日午前6時前に白馬村に到着。

標高1684メートルの黒菱平までゴンドラとリフトを乗り継いで上がり、黒菱平から八方池目指してゆるゆると登っていきました。

高山植物のシーズンで、登山道脇には様々な種類の可憐な花が咲いていました。花を見つけては写真を撮り、時間をかけて八方池山荘まで登っていったので、高山病はうまく回避できたようです。


午前10時頃、標高2086メートルの八方池に到着。まだ時間と体力に余裕があるので、唐松岳へ向かう登山道を、行けるところまで行くことに。

八方池まではよく整備された登山道でしたが、八方池から唐松岳へ向かう道はだんだん本格的な登山道になってきました。

途中、谷を見下ろす斜面沿いの道で、下山中の女性とお話ししたところ、ここからちょっと先に大きな雪渓があるとのこと。そこまで頑張って行くことにしました。

女性の話では、昨日、一昨日と雨が降り続けていたので、景色は何も見えずびしょ濡れになり、多くの登山者が途中で下山して行ったとのこと。今日は雨が上がって稜線も見えて、ツいている日でした。

途中、バテそうになりましたが何とか雪渓に辿りつき、ここで昼食。雪が残っているだけあり、半袖では寒い位気温が低い場所でした。

同じ道を戻って下山しました。八方池山荘からリフト、ゴンドラを乗り継いで白馬村まで下り、白馬駅へ向かう途中、温泉に入って汗を流しました。さっぱり。

松本からあずさ号で帰ってきました。車中爆睡。でも充実感のある一日でした。

北アルプスは、パタゴニアに匹敵する美しいところです。

2010-08-07

ゴッドファーザー [フランシス・F・コッポラ監督]


重厚な人間ドラマだ。どの俳優もその役柄の人間を描き切っている。

アル・パチーノがいかに素晴らしい俳優であるかわかる。以前、ブエノスアイレスのホテルのテレビでゴッドファーザーを見た。スペイン語に吹き替えられていたけれど、アル・パチーノの演技のすごさがひしひしと伝わってきた。ファミリーから距離を置こうとするシニカルな末っ子から、父親のためにファミリービジネスにのめりこんでいく過程、ファミリーを守るという名目のためにファミリーに対して冷酷に厳格になっていく矛盾。

演出が斬新だ。ゴッドファーザーで用いられた演出法がこの後制作された色々な作品に反映されていると思う。冷酷な出来事と、家庭的な出来事を同時に描いている。特に食べ物の描写が。

II、IIIとも評価が高いけれども、やはりこの一作目が完成度が高いと思う。

それにしても、コルレオーネ・ファミリーのママってどんな人なのでしょうか。父親と子どもたちとの絆はとても密なのだけれど、母親との関係があまり描かれていないし、ママはファミリービジネスをどう捉えていたのだろうか。この人が一番怖い人かもしれない。

1972年制作。