2010-09-16

死体が語る歴史[フィリップ・シャルリエ著]


歴史上の人物の遺骸を検死して判明した事柄について書いている。死体について語っているのだが、その人が生きていた時の状況が鮮やかに描かれていて、不思議な感じ。

ダウン症は先史時代からあったとか、回虫病が進行すると鼻から回虫が出てきたとか、興味深い事実を知ることができた。

三銃士の登場人物でもあるリシュリュー枢機卿、アンヌ・ドートリッシュ妃のことも書かれていて興味深かった。リシュリュー卿が死ぬと顔面の皮膚を剥いで遺体とは別に保存した。また、アンヌ王妃は乳ガンで死んだとのこと。

フランスでは王族が死ぬと心臓だけを取り出して別に保管しておいたという。でもフランス革命で多くの王族の遺骸や心臓が破壊されたり紛失したので、古病理学としては痛手だと言っている。

作者はフランス人の古病理学者で文学博士。古病理学の分野では第一人者のようなのだが、1977年生まれとまだ若い。検死で判明した情報によって、歴史上の論争が解決に導びかれたことも多々あるよう。