2011-05-04

風と共に去りぬ [ヴィクター・フレミング監督]


大メロドラマだ。これぞメロドラマ。

南北戦争をはさんで、米南部の綿花大農園の娘であるヒロインが家の没落、想い人とのままならぬ恋、愛娘の死亡を乗り越えて逞しく生きて行く姿を描いている。

今回観て思ったことがいくつか。大長編の原作をたった233分にまとめるにあたって、監督と脚本家は時間の流れの割愛をすごくうまく演出している。

それから、これはスカーレットとメラニーという2人の女性の物語でもある、ということ。メラニーを演じる女優がオリビア・デ・ハビランドほどの実力がなかったら、この映画はここまで深いドラマにならなかったと思う。勝ち気なスカーレットと控えめなメラニーという対照ではなく、この時代を生き抜かざるを得なかったすべての女性へのオマージュなのではないか。

レット・バトラー。映画史上十指に入る男前だ。前回観た時にはわからなかった彼の弱さに胸が締め付けられるようだった。恋は男を弱くさせるのですね。

背景となっている時代が戦争をきっかけに世の中のあり方が変わって行く時代だったからだと思うが、これでもかこれでもかこれでもかという位ヒロインに試練が課される。中にはヒロイン自身が招いたのではないか、というような試練もある。

スカーレット・オハラは優しさとたおやかさのある女性だが、情熱的で自己中心的な性格の方が勝っている。そんな性格だから試練が次々と舞い込んでくるとも言えるが、それだからドラマとして面白く、部外者である観客は映画を楽しめるわけでもある。もし自分がスカーレットだったら自分の性格に厭気がさして激しく落ち込むし、ミード夫人のような平穏な生活をうらやむと思う。でも、ミード夫人が主人公のメロドラマは名作にはならないだろう。やっぱりスカーレット・オハラの方がずっとずっと魅力的だ。

そう考えると、ままならない試練が重なるというのは、魅力的なドラマを生きているから、と発想を転換することもできるだろうか。

南北戦争を境に米南部の社会がどんどん変わっていく様子も描かれている。その頃の日本は幕末から明治へと移る時代。世界的に価値観が転換する時代だったのですね。米南部では今も南北戦争の評価について世論が分かれているらしい。

1939年制作。