2011-07-31

舌ガンから甦ったシェフ [GOOD FOOD]


Original Title: Grant Achatz of Alinea

シカゴにあるレストランのシェフが、舌ガンを克服した上に、全く新しいタイプのチケット制レストランを始めた話。

レストラン雑誌によって北米第1位、世界第7位に位置づけたシカゴのレストラン、アリニアのシェフは、店をオープンさせた2年後にステージ4の舌ガンを患っていることがわかった。たいていのガン患者は、余命がわかると人生観が変わって、これまでできなかったことをしようとしたりするが、このシェフは今までと同じ生活を続けていきたいと考え、家族と過ごす時間を確保するために週に100ドル以上は稼がないと決めた。

店には62人のスタッフがいるが、1年半の治療を受けている間、自分の病気でスタッフを意気消沈させたくなかったし、スタッフにも自分をがっかりさせてもらいたくなかったので、相互に信頼し合える関係を築きあげるようにしてきた。

手術を受けるまでの間、これまで弟子として指導してきたスタッフに徹底的に自分の味を覚えてもらい、手術後、自分が味覚を取り戻すまでの間は彼らに自分の料理のチェックをしてもらった。信頼関係と謙虚でなければできないことだったろう。

味覚が戻って来る時には、もう一度味わい方を学び直した、と言っている。シェフとしての経験を踏まえた上で、赤ん坊のように味覚を再体験することができた。始めに甘みを感じ、次に塩辛さ、苦み、酸っぱさが、次々と波のように甦ってきた。

舌ガンから全快した今は、新しいタイプのレストランを始めている。チケット制のレストラン。このレストランの特徴は2つ。1つは、メニューは世界の各地域をテーマに4期毎に変えること。2つ目は、音楽コンサートと同じようにオンラインで日時とテーブルを選んでチケットを購入する、というもの。

チケット制は画期的なビジネススタイルのよう。コンサートと同じように、当日客が行かれなくなっても払い戻しはしないので店側は利益を確保することができる。購入した本人が行く必要はないから、人にあげても差し支えない。それに、チケット制だと食事の後に精算する必要がないので、給仕の手間が省ける。

飲食業は利が少ない業種だが、ビジネススタイルを変えることで改善していきたいとのこと。予約が少ない水曜午後9時の予約を土曜午後7時の予約の25%引きで販売したり、など。85ドルの25%引きで63ドルになる。

ガンがわかった時のシェフの心の持ちように感銘を受けた。前向きであったことも全快につながったと思う。それから、このチケット制レストランのビジネススタイルは今後各地に広まっていくのではないだろうか。