2011-02-19

ブラック・サンデー [ジョン・フランケンハイマー監督]


手に汗を握った!!

故国のために戦う愛国者、自尊心を奪われた敗残者、彼らを追い詰めていく追跡者。それぞれの人間ドラマがサスペンスによって縒り合わせられている。

イスラエルの情報機関がベイルートにあるパレスチナ人テロ組織のアジトを急襲するが、首謀者はアメリカへ逃げてしまう。遺留品から大規模テロの計画が発覚。首謀者をそれと知らずに見逃してしまったイスラエルの情報将校はアメリカに渡り、首謀者を追い詰めていく。

このテロ計画に荷担するのが、ベトナム帰還兵のパイロット。ベトナムで捕虜になり、精神的傷害を負って復員した。しかし故国も家族も彼の痛みに対して寛容ではない。

終盤、テロリストたちと情報将校との対決に本当に手に汗を握ってしまった。特殊撮影シーンの連続で、最近の特殊撮影と比べると舞台裏がバレバレなのだけれど、演出と俳優の演技と編集が素晴らしく、息を詰めて見入ってしまった。

1977年制作。この映画が描くテロ計画の背景には、イスラエルを支持するアメリカへの反発がある。ユダヤ人入植で故国を追われたパレスチナ人の痛みをアメリカ人も知れ、ということ。あれから34年経ったが状況は変わらず。この映画を観た前日、国連安保理で、イスラエルによる入植を違法と非難する決議案がアメリカの拒否権で廃案になった。

トマス・ハリス原作。トマス・ハリスは「羊たちの沈黙」も書いている。この映画は制作当時日本で公開されず、今回が本邦初公開だった。