2009-04-30

入門マイクロファイナンス [フェルダー直子著]


タイトルの通り、マイクロファイナンスを初めて聞く人を対象にした入門書。

マイクロファイナンスは、バングラデシュのムハメッド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞したことで世間一般に知られるようになった。貧困国の主に女性に対して、無担保低金利で少額融資を行い、生計の手段を作り出すことを支援する金融サービス。

金利はだいたい月2~5%程度。これらの国の闇金融なら月10~100%の金利が課せられる。マイクロファイナンスの返済率は98%位で、少額利子とはいえ返済率の高さから十分に収益のあがるビジネスになっている。

マイクロファイナンスの歴史と取り巻く環境、条件の変化などをわかりやすく説明してくれている。しかし、著者はジャーナリストではないので、読んでみると"入門書"というよりは"私とマイクロファイナンス"といった趣。

途上国支援に携わる人たちって、いわゆるエリート教育を受けた人が多く、私はそれに馴染めないんですよね。

2009-04-26

Animal Researchers Unite After Extremists' Attacks [NPR]


UCLAで、動物実験を行っている科学者たちが、過激な動物愛護主義者に反旗を翻した話。

過激な動物愛護主義者はこの数年、UCLAの科学者を脅迫したり、車を焼いたり、自宅を荒らしたりして、動物実験反対のデモンストレーションをしている。

ある科学者は命の危険を感じて、動物愛護団体のホームページに「負けました」とメールを送った。

動物愛護主義者の行動があまりに過激なのでFBIでもこうした過激派(?)を「テロリスト・リスト」に載せたとのこと。

UCLAで、薬物中毒と精神病の研究をしている一人の神経医学者が立ち上がり、過激動物愛護主義者に屈しないぞという集会を開いた。何百人というUCLAの学生、教授がその集会に集まり、彼の主旨に賛同の意を表した。

動物愛護主義者の攻撃に晒されようと「治癒方法を見つけられなかった、という後悔はしたくない」とのこと。

病気になって医者に治療してもらったり、薬を飲んで回復するのは、多くの動物実験の結果だということを心して、感謝の気持ちを持たなければ。何事に対しても感謝する、ということは真実なのですね。

2009-04-25

God In A Cup; Food And Technology; Cheap Eats; Bamboodles [GOOD FOOD]


「食べ物」をテーマにしたTwitterが膨大にある、という話から「食べ物」に関わるテクノロジーについて話している。Twitterはひと言ブログのようなもの。

インタビュー相手はWired誌の記者。「新しい道具は新しい考えやアイデアを可能にさせる」と。食生活はどんどん世界を広げている。

テクノロジーが食べ物の新しい分野を開拓した例では、ドミノピザの新しいサービスがある。客にオリジナルのトッピングを考えてもらい、好きな名前をつけさせ、ホームページで公開するというもの。他の客もそのオリジナルトッピングを注文することができる。あるレシピは2ヶ月で8万3千枚も注文があったとのこと。

最先端テクノロジーの話題の後に、フロリダのトマト農園での前時代的な話。労働者が奴隷のような労働条件で働かされているという。

農園労働者の殆どはメキシコやグァテマラからの出稼ぎ。賃金は支払われないし、夜間は逃げないように鎖でつながれている。この人たちは英語はもちろん話せないが、中にはスペイン語も話せない人もいるとのこと。いわゆる原住民で部族の言葉だけを話すのだ。

支援する労働組合(?)は、フロリダ産のトマトを購入しているレストラン業界に、労働者に直接追加料金を支払ってくれるよう交渉した。マクドナルド、サブウェイなど。1パウンドにつき1セントというわずかな金額なのだが、一人の労働者が収穫するトマトはトン単位なので、まとまれば一人当たり1日50ドルになるという。

日本でも中国人農業研修生の過酷な生活が話題になっている。

どんな食べ物もそれを作る人たちの苦労、犠牲の上にあるということを心して食さなければ。コンビニで売られている食品には夜間労働の低賃金の工場で作られているものもあるのだし。

2009-04-24

話を聞く技術! [永江 朗著]


インタビューを仕事としている人たちにインタビューについてインタビューした本。河合隼雄先生や元刑事にも、人の話を聞くことについて聞いている。

登場する人たちはインタビューの第一線にいる方々なのだけれど、立場、職業を超えて言っていることは、インタビュー相手に対してポジティブな感情を持って接して、信頼関係になることがよいインタビューに必要だ、ということ。

そのためにいやがることは聞かないとか、相手の話によく反応するとか、むだ話を追いかけるとか、あなたの話しを聞きたいのだという熱心な態度をするとか、色々なワザをそれぞれ持っている。でも根本は相手にポジティブな感情を持つことのよう。

ポジティブ(前向きや積極精神)は、本当に人間にとって重要な要素ですね。

1日で読めてしまった。あまり重くない本です。

2009-04-22

ぐうたら社会学 [遠藤周作著]


重い本を読んでいたので、軽いものを。

1960年代から1970年代にかけて、東京新聞、主婦と生活、サンケイ新聞などに連載されたものを集めたエッセイ集。

主婦と生活に連載していたエッセイのテーマは「女性の悪口」だったらしい。主婦の話題は亭主と子どものことばかり、亭主が部長や東大卒(!)なら自分も同じだと考えているのは滑稽だ、と言っている。女性のその系譜は継承され続けていますよ。

サンケイ新聞に連載されていた「酔談」というタイトルのエッセイ・シリーズは、解説の方も書いているけれど、遠藤周作氏の小説家の重みとエッセイ家としての軽さがあいまった深みのあるエッセイになっている。

人と人とのつながりを持とうという意志の表れとしての笑いは、これから自分たちに必要だと言っている。イトイさんも同じようなことを言ってた。それと、宗教っていうのは、それぞれみんな違う女性を奥さんにして幸せに暮らしているのと同じで、状況によって違う宗教を持っていいと。敬虔で素直な気持ちがあれば。

あとなるほど、って思ったのは文化は形式、約束事で、約束事を知っているのが人間生活を送っていく知恵だということ。

そういえば遠藤周作氏は慶応卒でした。でも慶応に入るまで15回は試験に落ちたから要領のわるい学生に寄り添う気持ちを持っている。試験は一面であって、全てを否定されるべきでない、と励ましている。遠藤先生は信じていいと思います。

2009-04-21

戦争サービス業 [ロルフ・ユッセラー著]


ユッセラーは
安全の保障を、民間軍事会社の経営上の打算と利潤の追求に任せてよいものか
と問いかけている。

この本を読んで、1970年代には同じくらい貧しく衛生状態が悪かったアジアとアフリカなのに、なぜアジアの方が経済も衛生も改善されてきて、アフリカはさらに悪化していったのかについてヒントを得た。

アフリカは多民族すぎるとか、国境が現状と一致していないとかもあるのでしょうが、希少で高価な地下資源があるからなのですね。そこに冷戦が終結して、民間軍事会社に活動の場を与えてしまい、状況がどんどん悪くなっていった。

「貧しき者、汝は幸いなり」

この本で「日本」が言及されているのは5箇所。

ブラックウォーター社の総売上高の80~90%は、日本、アゼルバイジャンを含む各国政府からの業務委託で、残りが民間企業からの仕事になっている。(p.93)

[---社会の合法部分が組織犯罪に浸食される割合は---]例えばスカンジナビア諸国では非常に低いのに対して、他の先進工業国ではその割合が次第に増大しているし(日本やイタリアなどが先頭を切っている)(p.156)

南アフリカ人、ネパール人、イタリア人、日本人、ベルギー人などの「新しいタイプの傭兵」が反政府勢力に捕えられ人質にされるような場合、それぞれの国はジレンマに陥ることになる。(p.193)

アメリカ、カリフォルニアの民間軍事会社パシフィック・アーキテクツ&エンジニアーズ(PA&E)社は、この地域に同時にふたつの子会社をおいて--ひとつは日本、もうひとつはシンガポール--アジア全域にわたり業務を展開している。(p.212)

その取引先は、[---中略---]、日本と多方面に及び、はっきり分かっている提携会社のなかには、[---中略---]、新日本製鉄[---中略---]が含まれている。(p.212)


民間軍事会社はつまり暴力団と同じじゃない?弱きを挫き、政治家とツルむところなども。

フレデリック・フォーサイスがエグゼキューティヴ・アウトカムズ社のオーナー・グループのオーナーの一人であるとの記述に軽いショック。

ユッセラーはP.W.シンガー著「戦争請負会社」にかなり言及している。この分野に関する本は今後も読むつもり。

2009-04-11

Morels; Eating In Poland; Pig Face; Food Safety Bill HR 875 [GOOD FOOD]


GOOD FOODにも不況にまつわる話が...。

1週間の食費を30ドルにおさえているニューヨークに住むカップルの話。

以前は週に60ドル使っていて、冷蔵庫や棚に食品があふれていたが、そういう生活を見直したとのこと。食材の購入は生協のようなところから。この生協は、会員が店舗スタッフでもあり、人件費がかからなくて、かなりお安く食材を購入できるよう。

これまでは食べたい料理に合わせて材料を買っていたが、今は家にある材料でできる料理を作ったり、家にある材料を代用して食べたい料理を作っている。友人を招いてパーティも開くが、デザートを持ち寄ってもらって経費節減。

私はスーパーで買い物する時、どうがんばっても2000円を超えることができないのだけど、前に並んでいる人は8000円とか払っている。まぁ払える人はいいですよね。

中華料理店にディスプレイされている「豚の顔」を買った人の話。なんと「豚の顔」はたったの1ドル50セント。耳はカリコリしていてなかなかおいしいし、頬肉は柔らかくてよいし、残りはスープ出汁にしたりして、かなり使いでがあってお得だとのこと。しかし市場に出回る数は少ないですね。

魚の頭も意外に肉がついていて、コラーゲンたっぷりでおいしい。しかも安い。これからますます「捨て部分」を工夫して利用するようになりますね。(写真はカンボジア、バッタンバンの市場で撮影したもの)

2009-04-05

Forget 'Blue Velvet,' Rossellini Tries 'Green Porno' [Story of the Day]


映画「ブルー・ベルベット」や「永遠に美しく」などで妖艶な女を演じたイザベラ・ロッセリーニが、哺乳類でない生物の性生活を紹介するテレビ番組「グリーン・ポルノ」を制作、出演もしている話。

環境問題で何かメッセージを発したいというよりは、生物の性生活というエサで視聴者を釣って色んな生き物がいるんだっていうことを知ってもらいたいとのこと。

ロッセリーニ自身がチープな被り物を着てその生物を演じている。携帯やiPodで視聴されることを念頭にシンプルな画面構成で制作している。というか予算もないしって言ってる。

ユーチューブで配信されています。1分から3分の短い番組ばかり。ふふふって笑いながら、へぇって感心してしまう。カタツムリの回はきわどいくらい色っぽいですよ。

この世には多種多様な生き方があって、みんなと同じでない方が普通なんですね。

NPR Podcast

2009-04-04

Asparagus; The Psychology of Eating Meat; Grilled Cheese [GOOD FOOD]


GOOD FOODはポジティブな話が多い。

21才の時脳梗塞で意識不明になったこともある女性が、リハビリで料理を始めて、今では料理研究家として本("Cooking and Screaming")を出すほどになった話。右側が動かなくなったので、左手で包丁を持って野菜を切ることから始めたとのこと。

好きとまでは言わないまでも、イヤでないことなら続けられるし、続けようという気持ちは前向きだから、続けていけば(それが倫理に外れていなければ)物事を良い方向に向かわせていくのですね。

ポートランドの町が屋台レストランの出店を応援している話。屋台レストランが出店することで町に活気が生まれるという研究結果もあるとのこと。東欧出身の出店者が多いよう。チェコのシュニッツェルとかボスニアのシチューパイとか。レストラン料理のように質が高いけれど、値段は800円前後。

共産圏崩壊後の移民の人たちが生活のために始めたのかな。オフィス街に弁当ワゴンが集まりますが、夜も楽しめるといいですね。立ち食い立ち呑みで。

庭で育てた果物や野菜を交換する話。果樹は実がなっても家族では食べきれなくて、朽ちていくことが多い。よそのうちで収穫された作物と交換して、少しずつ色んなものを楽しもうという運動。15家族が参加している。

インタビューを受けている主催者の声が独特って思ったら、アニメ声優だった。

イトイさんは永田農法を推奨してますが、ご近所と分け合えたらいろいろ楽しめていいですね。まさにロハスだよね。

ところで、GOOD FOOD VIDEOでロサンゼルスの有名なタコスの屋台を紹介している。NPR FOODでも取り上げられたKogiというメキシカン・コリアンのタコスの店も。今すごく人気があるらしい。薬念で味付けした牛肉とキャベツをトルティーヤで包んで食べる。そりゃ、おいしいよ。

KCRW: GOOD FOOD

2009-04-03

甦る男 [イアン・ランキン著]


スコットランドのエジンバラを舞台にした
警察小説、リーバス警部シリーズ。

前回読んだ「血の流れるままに」と、この
「甦る男」の間に4年の歳月が流れていて、
人間関係がだいぶ変化している。

何より、みんなが携帯電話を使っている!

今回は、画商殺しの事件から外れて再教育
コースに入ったリーバスが、6年前の強奪
事件の真相を探りつつ、別の6年前の自分
が関わった事件も追う。

リーバス、またまたヤバいぜ。

でも、一匹狼のようで、彼には助けてくれ
る人がちゃんといる。特にシボーンやジル
といった女性陣が頼りになってます。

気の合う人には誠実に接して、
大切にしないといけませんね。

作家はどうやってプロットを組み立ててい
るのだろうか。読者が最後の十数ページで
やっと知る真相を作者は最初の一文字目か
ら知っているんだよね。

三つの事件を絡み合わせ、少しずつ真相へ
の手がかりを落としては登場人物達の捜査
を進展させている。と同時に事件に左右さ
れる彼らの私生活も描いているから、
ものすごく感情移入してしまう。
だから面白い。

たぶん、書いていても面白いんだと思う

今回は、敵役も含めて女性陣の描かれ方
に奥行きがあった。

次からは発表順に読んでいこうと思う。