読んだ本と、映画館で観た映画の記録をつけています。
おもしろかったポッドキャストの記事の紹介も。ポッドキャストは、NPR:Story of the DayとKCRW:GOOD FOODから。
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2011-06-21
塀の中の刑務所大学 [NPR]
Original Title: Inside San Quentin, Inmates Go To College
カリフォルニア州の悪名高きサン・クエンティン刑務所の中に非営利団体が運営する大学が設立され、受刑者が学位を取得している話。
1996年に2人のボランティアによって始められたこの大学は、今では320人の受刑者学生が在籍し、3000人以上の地域ボランティアと100人以上のボランティア講師が、70近いプログラムを指導している。講師はUCバークレーやスタンフォード大学、サンフランシスコ州立大学などの一流校の教員。運営する非営利団体は独立した基金を持ち、行政からの資金には全く頼っていない。
受刑者が高等教育を受けることに異論はあるが、大学教育が受刑者に深く影響を与えていることはたしか。
窃盗と殺人で収監されている受刑者学生の1人は、自分たちは出口のない泡の中に閉じ込められているが、大学で学ぶことで自分自身は変わってきた、社会人として出所したい、と言っている。もし、自分がここで教育を受けなかったら、刑期を終えても犯罪者として出所することになっただろう、と。
別の受刑者学生は、学ぶ場があるのは受刑者にとってとても意味がある。することがなかったら暴力に走るしかないからだ、と言っている。
たしかに、刑務所大学ができてから、サン・クエンティンでの受刑者の服役態度は改善され、騒動がなくなってきたし、出所者の再犯率も低下しているよう。サン・クエンティンは今では静かなる刑務所となっている。
受刑者が犯罪者となったのは、貧困ゆえの低学歴、失業が大きな要因であり、それは次の世代へと引き継がれている。受刑者の子どもの半分は親同様に刑務所行きだ。運営団体は、刑務所大学が負の連鎖を断ち切るようになれば、と考えている。
更生プログラムの予算を60%も削減した州政府も、サン・クェンティンの刑務所大学の動向を注視しているよう。
自分は泡の中に閉じ込められている、と気付いた時点で、壁に穴は開いているのですよね。それは受刑者だけでなく、誰にとっても同じだと思う。
サン・クエンティンの受刑者学生は、もし育った環境が異なっていたら犯罪者にはならなかった人たちなのではないか。そんな人たちがサン・クエンティンだけで320人もいるということは、アメリカの社会自体が国民を犯罪に走らせているように思える。