2011-01-15

チャップリンの独裁者 [チャールズ・チャップリン監督]


チャップリンの初トーキー映画。ユダヤ人と独裁者を1人2役で演じている。

冒頭は戦場のシーン。一兵卒のチャップリンは主に動きで笑わせるのだけれど、その後独裁者として登場すると音で笑わせる。ドイツ語調に聞こえる言葉で演説しているのだけれど、それは無意味な音でしかない。

サイレントではなくトーキーだとチャップリンが本当にいい男だということがよくわかる。おかしいのだけれど色気があり、かわいさと哀しさが感じられる。

脇役の俳優陣も、台詞を話していることで、生身の庶民としての存在感が迫ってくる。今までのチャップリンの無声映画だと脇役陣はチャップリンのおかしさを際立たせるためだけの存在だったような印象がある。生身の存在があるから独裁政権の圧政に、観客は恐怖や憤りといった感情をかきたてられるのだ。

チャップリンがこの映画をトーキーで撮ったのは、ラストシーンの演説を観客に訴えたかったからとのこと。笑いとサスペンスと哀愁が入り交じってドラマは進行する。そしてラストシーンで、観客は厳粛な気持ちにさせられる。