2011-01-12

白鯨(上) [ハーマン・メルヴィル著]


本好きならば押さえておかなければならない名作なので、読むことに。

鯨に関する博物学の導入部が長い。「白鯨」の主人公はエイハブ船長と思っていたが、エイハブが登場するのは上巻の中盤を過ぎてから。しかもその後もあまり姿を現さない。

19世紀末のアメリカ東海岸の捕鯨の港町の様子がよくわかる。捕鯨船員たちの生活や、捕鯨がいかに人々の生活を支えていたかも。

一番印象に残っているのは、語り手のイシュメールと心の友クィークェグが泊まった「煮こみ亭」のチャウダーの描写。むっちりしたハマグリの身とバターでとろりとしたチャウダーの描写にお腹が空いてきてしまった。タラのチャウダーというのもまたおいしそうだ。

語り手はイシュメールという商船船員から捕鯨船員に転身した船乗りで、登場人物紹介に「全知全能者の視点から物語を語る」と書かれているが、イシュメールが語っているのかメルヴィルが語っているのか、混然一体としている。

巻末に訳者による注釈があり、これも面白い。聖書からの引用、当時の風聞、通説、事件などが簡単に記されている。英文学研究の面白さはこういうところにあるのか、と思った。

白鯨の時代は、日本では幕末。日本人は近海で鯨を追っていたが、アメリカやヨーロッパの船は地球を一周して鯨を追っていたのですね。

続いて中巻も読んでいきます。