イギリスの架空の町デントンを舞台にした警察小説、フロスト警部シリーズ。
ゆるい警察小説なのだけれど、読み出すと止まらなくなる。
デントン署管内で、少年誘拐殺人事件、少女誘拐事件、腐乱死体、一家惨殺事件と四つの事件が同時に発生。しかも、デントン市警察の幹部が起こした交通事故によって同乗していた警察幹部数名が入院。このための一時的な人事異動のせいでフロスト警部に捜査指揮権が集中してしまう。それぞれの事件の捜査の過程で別の事件の手がかりが見つかり、後半は事件がひとつずつ解決されていく。
陰惨な事件の連続なのだが、フロストのおっさんの軽口のおかげで全然暗くない。まったく頭のいい人だ。厭味な上司の切っ先をこんなにあっさり制することができるなんて。「おれも気づいていましたよ。署長がこの部屋に足を踏み入れたときから--何か踏んづけたんですか?」
リーバスやボッシュと同じく、フロストも些細な気がかりをないがしろにせず、追求の手をゆるめない。「そういう小さな点をゆるがせにしないで、徹底的に追及するってこと、警部に教えていただきました」
空振りもあるけれど、その帰り道に次の展開につながる何かしらを拾って来ている。とにかく動き続けていれば状況は開けて行く。
あとがきに著者ウィングフィールドが最近、79才で逝去したとある。未邦訳のフロスト警部シリーズはあと2作品とのこと。年を取っても枠に収まらないで軽妙お下劣(?)なミステリを生み出していたとは、見習わなければと思う。