中世の世界を見事に再現している。公開当時も観たが、今回観て、登場人物たちのキャラクターがまるで漫画のように際立っているという印象を受けた。演じる俳優の髪型、肌の色、顔の造形が漫画のようにはっきり特徴付けられている。
物語は、14世紀の僧院で連続殺人事件が起こり、僧院を訪れたフランチェスコ会の僧が真相を究明していく。僧院の図書館の蔵書に事件を解く鍵があるらしい。
原作はミステリの骨格を持ちながら当時の思想、哲学、宗教、社会について詳細に記述しているウンベルコ・エーコの作品。読んだだけでかなり博識になれそうなくらい。しかも、登場人物たちの名前のひとつひとつに著者は意味を隠している。
原作を読んだ後に映画を観ると、あまりに端折りすぎて流し過ぎていると感じるが、公開当初に観た時は、重厚で剥き出しの人間ドラマに圧倒された。