2012-07-28

縫ったり、編んだり。[大橋利枝子著]


「手芸の本-裁縫・編み物・刺繍-」で大橋さんの手芸に対する態度に感銘を受けたので、他の著書も読んでみることに。

「手芸の本」より、作品が多く掲載されていて、作り方も懇切丁寧に載っている。作品は、直線断ちのワンピースとかの大物からがま口のような小物まで。手芸初心者でもきれいな仕上がりにするためにどうしたらいいか、という著者の考え方も書かれていて、内容が深い感じ。著者の考え方にも共感。

キャミソールを作ってみようと思う。

2012-07-25

イスラームから見た「世界史」[タミム・アンサーリー著]


深く、面白い!!!視点を転換させられた。

イスラム世界を中心に据えて世界史を語っている。この本を読んで、これまで世界史の中で漠然と知っていたことの背景がよくわかった。例えば、バビロン捕囚、イスファハーンという都市の成り立ち、ヨーロッパの知識人がアラブを通してギリシア哲学を知ったこと、シルクロードにイスラム教が広がったこと、マルティン・ルターの宗教改革の意義、シーア派、ジハード、オイルマネー、911に至るアラブ社会のひずみ。

「銃・病原菌・鉄」を読んで、人間の歴史についての視点が大きく変化したのだけれど、この本はさらに視点を大きく転換してくれた。人類の文明発祥の地がその後どうなっていったのか、という、ある意味押さえておくべき歴史であると思う。

イスラムといえば女性隔離が特徴として挙げられるが、この本はイスラム世界でなぜ女性が被保護者として社会から隔離されてしまったかの経緯についても提示している。

著者は、イスラム初期には女性も戦争を含む社会活動に積極的に参加し、為政者も行政に女性を採用していたが、第2代カリフのウマルが「性的欲望の破壊的な威力を弱めるために−略−男女の役割を規定し、男女を隔離するという手段をとった」(p.119)ことで、女性が社会活動から遠ざけられてしまった、と述べている。"性的欲望の破壊的な威力"って。砂漠には他に楽しみがないとはいえ。

女性隔離は、その後ビザンツ、ササン朝ペルシアの慣行を真似ることで、ますます確固たる社会ルールとなったよう。ビザンツとササン朝ペルシアでは「上流階級の女性はその地位の高さの証として深窓に隔離されていた」(p.225)。

第2代カリフのウマルはまた、クルアーンを拡大解釈して飲酒も禁止した。

意外だと思ったことは、11世紀の十字軍の時代、イスラム圏ではジハードが死語と化していたこと。ムスリムは、十字軍が攻撃してくるのは自分たちがイスラム教徒だからとは思っていなかった。

攻撃といえば、モンゴル襲来でイスラム圏が壊滅寸前に追い込まれたことも知った。日本にもモンゴルは元寇としてやって来たが、イスラム圏では文化が変わってしまうほどの衝撃であった。

「銃・病原菌・鉄」を読んだ時、日本の明治維新がどれほどの幸運な巡り合わせで興り、日本という国をうまい具合に現代史の潮流にのせたかがわかったが、この本を読んでもう一度、明治維新の奇特さがわかった。以前読んだ本に、エジプトとトルコでも日本の明治維新のような運動が起きたが、うまくいかなかった、と書かれていた。この本でエジプトとトルコで改革運動が挫折した背景をよく知ることができた。エジプトとトルコのみならず、18世紀にはイスラム圏全体で改革運動が興っていたのだが、どれも中東におけるムスリムの生活を"より良く"するには至っていない。

読んでいて色々視点を転換することができたのだけれど、そのひとつは中世ヨーロッパについての記述で、個人的に興味を持っているバルカンについて理解する手がかりを得たように思う。バルカンについてはほんのちょっぴりしか触れられていないが、キリスト教徒とイスラム教徒が長く共存していたこと、バルカンがヨーロッパ内で立ち遅れてしまっていることの背景について、今まで読んだバルカン関連の本よりもずっと実感をもってわかってきた感じがする。

一番はっとさせられたのは、「つい忘れてしまいがちだが、世界を国家の集合体に組織するという動きが始まってから、まだ一世紀も経っていないのだ」(p.576)ということ。

そして、世界の歴史とは「きわめて重大な一連の出来事だけで構成されている」(p.19)という主張に強くうなずいた。

著者はイスラム社会で生まれ育ったとはいえ、本当によく調べて書いている。しかも中立の立場を貫いている。個人的に、今年のベストワンです。

2012-07-11

手芸の本-裁縫・編み物・刺繍- [大橋利枝子著]


スタイリストであり手芸家である著者の、手芸に対する思い、お気に入り、気を付けていること、コツなどがコレクションの写真とともに綴られている。とても簡単な小物の作り方も掲載。

お気に入りの手芸関連店のリストもある。東京中心だけれど。

本を見て作ってうまくできなくてもあきらめずに作り続けましょう、ということが書かれている。手芸の先生たちはたくさん練習して、何十年とやっている技術があるから、初めて作って本の作品と同じようにできなくても当たり前、ということ。そのことは自分も思っていたので、著者に共感した。

それから、チクチク針を動かしていると気持ちが落ち着いてくること、とか、ミシンがなくても手縫いで作ればいい、とか、他にも共感することが多かった。

シンプルな作りの本だけれど、著者が手芸を通じて会得したコツや秘訣や考え方を惜しげなく披露しており、これからの手芸生活の指針になるようなことが多い。

著者の他の本も読んでみようと思う。

2012-05-16

Tinker Tailor Soldier Spy (裏切りのサーカス) [トーマス・アルフレッドソン監督]

入り組んだ人間関係とプロットをよく2時間にまとめたと思う。ジョン・ル・カレの非情な世界がスタイリッシュな映像で表現されていて、スマイリー三部作ファンとして、満足の行く出来栄え。

「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」が、コリン・ファースとゲイリー・オールドマンをキャスティングして映画化されると聞いた時、コリン・ファースがスマイリーを演じ、ゲイリー・オールドマンがヘイドンだと思った。コリン・ファースは「英国王のスピーチ」で隆とした国王を演じたけれど人間としての弱さも表現していた。演技派の彼ならスマイリーの気弱な感じが出せそうだ。金髪のゲイリー・オールドマンが冷たい色男を演じるのもアリ、だと思った。コリン・ファースの体型の方がゲイリー・オールドマンより丸いじゃないですか。

実際の配役は逆だった。

原作を読んだのは何年も前にだったが、原作を読んでいたので何とかストーリーに付いていくことができた。ピーター・ギラムが資料室からフォルダを持ち出すシーンは、原作でもハラハラドキドキしたけれど映画でもヒヤヒヤさせられた。原作では、地味な事務仕事、無味乾燥な書類の束から手がかりを拾いだすところに意外な面白さがあるのだけれど、映画ではそのあたりの表現はどうしても難しかったのか、男たちの駆け引きとノスタルジックな60年代風景をカッコ良く映し出すことで観客を引き込んでいる。

アン・スマイリーはやはりおぼろげな存在として描かれていた。誰が彼女を演じているのかもわからないように映されている。

原作にはない同性愛的描写が多かったように思う。ピーター・ギラムが男性と同棲していたり、ビル・ヘイドンとジム・プリドーの関係とか。これは実際の事件の中心人物キム・フィルビーが同性愛者だったことを反映させているのか。

この映画で話題のトム・ハーディを初めてまともに観た。キアヌ・リーブス似のイケメンですね。彼が演じたリッキー・ターとジェリー・ウェスタビーを混同していた。スマイリー三部作の第2作「スクール・ボーイ閣下」の準主人公ジェリー・ウェスタビーがリッキー・ターの役回りだと思っていた。原作をあたったらちゃんとリッキーとジェリーは別人物でそれぞれ登場していた。映画の配役を見たら、ジェリ・ウェスタビーもちゃんと登場していた。それでも、トム・ハーディはジェリー・ウェスタビーのイメージに近い。

「裏切りのサーカス」という邦題にはどうしてもなじめないが、映画は大ヒット長期上映中。「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」の続編「スクール・ボーイ閣下」も映画化されるのでしょう。もっと入り組んだプロットと人間関係、広範囲な舞台がどのようにまとめられるのだろうか。個人的に「スクール・ボーイ閣下」にはとても深い人生の思い入れがある。


2012-05-12

Sushi、スシ、すし、寿司特集 [GOOD FOOD]


寿司関連の話題を集めた回。それほどみんなスシが好きなのですね。

□カリフォルニア・ロール以前のスシ
Original Title: Sushi before the California Roll

スシの歴史についての本「スシ物語」(The Story of Sushi: An Unlikely Saga of Raw Fish and Rice)を著わした著者がゲスト。スシの起源から現代のスシ文化を語っている。

スシの起源は、魚を酢っぱい米で発酵させた物で、スシという言葉は中国語の酸っぱいに由来する、と言っている。発祥地は東南アジアではないかと思われ、最初は川魚で作られていたのだろう。16世紀頃に日本で発酵時間を短くしてケーキのように切って食べる方法が考え出され、今のスシにつながった。

アメリカで人気のネタはマグロ、サーモン、ハマチ、ウナギ。最近は脂肪分があるとろけるような食感のネタに人気がある日本ではヒラメを食べているけれど、びっくりするくらいおいしい、と。アメリカスシの特徴は色々な種類の巻物を考え出したこと。

スシはもともとファストフードだったが、今は特別な時に食べる料理になっている。

よく寿司のことを調べている。


□アメリカ スシことはじめ


アメリカにスシがやってきたのは1950年。カナイ・ノリトシという日本人男性がロサンゼルスのリトルトーキョーでスシを始めた。この方は今もご健在。開店当時のお客は日本人駐在員ばかり。アメリカ人はもちろん日系人も来なかった。この頃、日本の金融機関がアメリカ駐在を増やしていたので、日本人ビジネスマンに連れられて来たアメリカ人たちがスシのおいしさに触れ、その後勇気のある人たちがやって来るようになり、スシはアメリカに広まっていった。

私的印象では、日本人の寿司職人のいる店は格式が高い感じがする。


□映画「すきやばし 次郎」
Original Title: Jiro Dreams of Sushi

ミシュランが認め、世界一のスシと外国人が憧れてやまない「すきやばし 次郎」のドキュメンタリー映画が製作された。その映画監督がゲスト。

映画では、店主次郎氏本人の人となり、二人の息子との関係、次郎でのスシ職人修行について描いている。次郎氏は客の前ではストイックで笑顔を見せないが、店が終わるとリラックスする。厨房での修行は、おしぼりの作り方から始まって、魚のさばき方を学び、10年働いて玉子寿司を握るのを許される。

次郎氏は現在86才。すべてにおいて最高水準を求めて、今も寿司を握っている。番組ホストが、でもすごくお高いじゃない、と言うと、監督は、次郎は真のスシ好きが行くところ、と。予約をすればシャリ、ネタ、タイミング、全てが完璧な状態で出てくる。

店は地下にあるのだが、それは天候に左右されずに気温、においが一定に保たれ、味に影響を与えないため、とのこと。私の行きつけの寿司屋も地下にある。次郎は無敵の世界最高水準かもしれないが、身近に頑張っているおいしい寿司屋をみつけて、なじみになって寿司を楽しむのも"真の寿司好き"のあり方ではありませんか。


□持続可能なスシネタの注文
Original Title: Ordering Seafood Guilt Free

スシが世界的に人気を集めるに従い、ネタの魚の乱獲が問題となっている。

ニューヨークでは、スシネタの持続可能性(Sustainability)を考えながら注文するようになっているとのこと。スシバーも持続可能度が高いネタの提供をウリにしている。例えば、青ヒレの魚より黄ヒレの魚の方が育つのが早いから環境に配慮したメニューになっている、とか。

そこでフィッシュ・フォン(Fish Phone)というサービスの紹介。魚の名前をテキストメッセージで送るとその魚についての説明と持続可能評価が返ってくる。

日本でもWWFがスシネタの持続可能性についてキャンペーンを始めたよう。

WWFジャパンさかなガイドはこちら

どの魚を食べれば環境に配慮しているのか、なんて調べながら食べるのも一つの"ネタ"かもしれないが、要するに残さず全部食べること、食べられる量だけ注文したり作ったりすることをまずしたらいいと思うのだが。

2012-05-02

アーティスト [ミシェル・アザナヴィシウス監督]


2012年アカデミー賞作品賞受賞作品。

1920年代末から1930年代にかけて、無声映画からトーキーに移り変わる時代のハリウッドを描いている。

ストーリーは、無声映画の人気俳優がトーキー映画の登場で落ち目になるが、飼い犬と彼が目をかけた女優によって復活を果たす、というもの。とてもシンプルな筋立ての上に"ほぼ"無声映画。台詞はときどき字幕で出てくるだけ。なのだけれど、俳優と犬の演技と演出で観客に様々な感情をもたせてくれる。

無声映画からトーキーへと最新技術で変化する時代をまさに無声と音声で表わしているのが斬新。主演俳優はフランス人だけれど、その他の主要キャラはアメリカ人が演じているから、主演俳優の訛りのある英語を隠すという意味もあるのかもしれない。それでも、製作と監督はフランス人。映画発祥の地、ハリウッドへのレスペクトなくしてこのストーリーにはならなかっただろう。

ヒッチコック映画もストーリーは意外にシンプルだけれど、映画にとってストーリーは複雑にひねった情報過多である必要はないのではないか。映画は、映像と演技と演出を手段にして表現するものだ、ということを再認識させられた。

i-Tunesで予告編を見た時から、名作になるに違いない、と思っていた。特別予告編で、ペピー・ミラーを演じたベレニス・ベジョがダンスシーンのことについてこう言っている。たった2分のシーンのために5ヶ月もレッスンを続けてきたなんて、これぞ映画って感じ、と。

2012-04-28

ケンタッキーダービーでケンタッキーバーボンを [GOOD FOOD]


Original Title: What to Drink at the Kentucky Derby

ケンタッキー・ダービーが5月に130周年を迎えるにあたってケンタッキー・バーボンの話。

ケンタッキーで作られるバーボンは、つまりトウモロコシで作るウィスキーなわけだけれど、なぜバーボンと呼ぶのかというと、1790年代からブルボン家がバーボン郡を作りそこで製造したことに由来するとのこと。1960年代の「洋酒天国」で、バーボンをブルボンと呼んでいる。いつから"ブル"が"バー"に変わったのだろうか。

ところで、バーボン醸造会社でテイスティングをしている女性がバーボン・ウーマンというクラブを創った。バーボンは男性の飲み物というイメージが強いが、女性の愛好家も増えているし、バーボンに興味を持つ女性も増えているのを感じて、気軽にバーボンを楽しめるようにと創設した。集まってテイスティングをしながらお喋りを楽しんでいるよう。

ケンタッキーでバーボンといえば、ケンタッキー・ダービーとミントジュレップが有名。ミントジュレップはミントの葉、砂糖、バーボン、クラッシュアイスで作るカクテル。ダービー観戦に欠かせない飲み物。

ミントジュレップのレシピについては、ケンタッキー人それぞれに主張があるらしいのだが、ここで紹介されているのは、ミントシロップを使うレシピ。

ミントシロップの作り方。同量のグラニュー糖と水を火にかけ、砂糖が溶けたところでミントの葉をむしって入れる。エキスが出る位浸しておいたらミントの葉を取り除き3日位冷蔵庫で寝かせる。

ミントジュレップを作る時は、金属カップをよく冷やしておき、ミントシロップをティースプーン2杯にバーボン、クラッシュアイスを加えて作る。小さなカップでクイっと飲むのが粋な飲み方。何杯飲んでもかまわない。

ミントシロップを作ってみた。ミントの種類が違うのか、葉を浸しすぎたのか、苦い風味のシロップが出来てしまった。

2012-04-21

ニューヨーク公立図書館のメニューコレクション [GOOD FOOD]


Original Title: The New York Public Library's Menu Collection

ニューヨーク公立図書館に4万点以上のレストランメニューのコレクションがある話。オンラインでも閲覧することができる。

このメニューコレクションは、ブトーさんが集めたコレクションから始まった。ブトーさんは1900年頃から1920年までニューヨーク公立図書館でボランティアとして働いていた人。ボランティアといいながらも図書館内に自分の机を持ち、辞めるまでの間に2万5千点ものメニューを集めた。

メニューの収集はニューヨーク中心に始まったが、世界各地のレストランから送ってもらった時期もあった。しかし保管場所が限られているため、今はまたニューヨーク中心のコレクションに戻ったとのこと。

一番古いメニューは1843年の女性クラブのもの。明治維新より以前の時代だ。今も収集は続いており、コレクションが膨大な数になったので、スキャンしてデーターベース化した。図書館のホームページでコレクションを閲覧することができる。実物が見たい場合は、ホームページでメニューを特定してから図書館に予約をとればよい。

写真は1962年の日本食レストランのメニューの表紙。スキヤキ3ドル、バタ焼き4.5ドルなどが掲載されている。他にヨセナベ、テイショクもある。

メニューを見ていると、同じ料理が年代によって呼び名が変わるのがわかるし、値段の変化もわかる。貴重な食の社会学的資料であるけれど、単に料理名をながめているだけでも楽しい。江戸時代の料理屋の品書きが残っていたらどんなにおもしろいだろう。鬼平の世界ですね。

ニューヨーク公立図書館のメニューコレクションはこちら

2012-04-20

治療島 [セバスチャン・フィツェック著]

ドイツのスリラー推理小説。

原因不明の病気にかかった娘を病院に連れて行った精神科医は、そこで娘を見失ってしまう。そして4年の歳月が流れ、なぜか精神病院に"入院"している精神科医は主治医に、娘の失踪から2年後にある島で遭遇した不思議な体験について語る。それは、娘の失踪について何かを知っているらしい美しい女性にまつわる不可解な出来事の連続だった。この女性は娘の失踪の真相を知っているのか。

統合失調症の女性の言動と、娘の失踪で精神的ダメージを受けている主人公の精神科医の妄想が入り乱れて、読んでいて非常に不安な気持ちになってくる。サスペンスフル。ホラー小説ではないのだけれど、読んでいてこんなにコワかったことはない。ウツがひどくなってしまった。

半分ほど読んだ時点で、オチの見当がついたのだけれど、作者がどう落とし込むのか気になって読み進んだ。最後まで読んで、ナルホド、うまくヒネりましたね、と納得。

最近、非英語圏ヨーロッパのミステリに注目作品が多い。「ミレニアム」しかり。しかしヨーロッパの作品はどことなくひやりとした印象がある。ところで、この作品は精神状態が不安定な人は避けた方がいいと思う。

2012-04-18

関西文学散歩 京都・近江 [野田宇太郎著]

日本文学に登場する、または文壇に縁の深い京都とその周辺の地を訪ね、元本の文学作品やその作家たちについて語っている。「文学散歩」というジャンルは野田宇太郎が作り上げた、と言われている。

京都関連の文学作品が無数に登場し、様々なエピソードが紹介されている。文学部の教科書といえる本だ。昭和36年2月発行で旧漢字で印刷されている。"学"が"學"になっているなど。

日本文学に詳しくないので国語の教科書に登場しない作家たちについて初めて知ることが多かった。ドナルド・キーン先生が、日本文学は世界に誇れるすばらしい芸術だ、というようなことを言っているけれど、この本を読んで日本文学の奥深さ、層の厚さを知った。

東三本木に文壇関係者が常宿としていた信楽という旅館があったというエピソードも興味深い。女将は当時の政界の有力者と親密な間柄だったという。それから長田幹彦の「祇園夜話」という小説について何度も言及しているので、そのうち読んでみようと思う。

各地を訪れ各作品、各作家についてとても丁寧に語っており、貴重な資料であると思う。がんがん読み進むという本ではない。というわけで、日本文学にもうしわけないのですが、読了せずに半分過ぎたあたりで読むのをやめてしまった。