2012-12-05

ドライブ [ニコラス・ウィンディング・レフン監督]


最初のシーンから"ドライバー"の世界に引き込まれた。

車のドアが閉まった瞬間、エンジンオイルとガソリンと、芳香剤がまじった湿った空気の匂いを嗅いだような気がした。

犯罪現場から実行犯を逃がす走り屋をしているドライバーが主人公。冒頭シーンで、強盗を乗せ警察の追跡を振り切るのだが、このドライバーは只者ではない、と思わせる演出が秀逸。ビルの影になった暗闇に停車したり、バスケットボールの試合会場の駐車場に駐車したり。スピードだけではないカーチェイスを描いている。

ドライバーは同じアパートに住む亭主が服役中の母子家庭と親しくなる。亭主が出所してドライバーと三角関係になるのかと思いきや、この亭主がまたドラマを深めるような人間性を備えている。結局この前科者亭主はもう一度犯罪に手を染めなければならなくなり、ドライバーが協力することになるのだけれど.....。

ライアン・ゴスリングが、潜在する凶暴性を押し隠している、静かで寡黙で愛らしい一面を持つドライバーを演じている。「ラース、とその彼女」の彼とは別人のようだ。

激しいアクションシーンは少ないが、静かな車内に緊張が漲り、次に何が起こるか、観ている間中心臓がドキドキさせられた。

監督はデンマーク出身。原作は米南部出身でイギリスに移住した作家ジェイムズ・サリス。脚本はイラン出身のホセイン・アミニ。2011年カンヌ国際映画祭監督賞受賞。