2011-09-29

図書館の死体 [ジェフ・アボット著]


田舎町の図書館で他殺体が発見される。発見者の若き図書館長は前日に被害者と口論していたため、容疑者とみなされてしまう。容疑を晴らすため捜査を始めると、退屈な町の住民の知られざる顔が次々と現れ、晴天の霹靂の衝撃事実が!

アガサ・クリスティの世界だ。田舎町で殺人事件。しかも、犯罪とは全く無関係に見える場所で遺体が発見される。そして捜査で浮かび上がる住民の秘密の数々。最後に関係者が集まって探偵が真犯人を名指しする、というシーンはないのだけれど、まさしくクリスティの世界。と思ったら、1995年にアガサ賞を受賞していた。

本格推理物では、探偵が関係者たちから証言を集める段階がちょっとだれてしまうことがあるのだけれど、この作品の場合、アメリカ的ノリの軽さとジョークで面白く読み進んでしまった。マンガっぽい表現が多かった。例えば挨拶の握手をする時、「井戸水を汲みあげる昔のポンプの取っ手でも動かすように、大きく上下に振った」とか、被害者の意外な一面を知って「あやうく顎をはずしそうになるのをまぬがれ、顎の先を床にこすらずにすんだ」とか。

でも、構成はしっかりしていて真相に破綻がない。ちゃんと伏線が張られていて、あっと驚く秘密の暴露も納得。

この前に読んだ「何かが道をやってくる」も図書館が主要舞台の一つだったので、自分的には図書館つながりの不思議な縁を感じた。