2011-09-22

何かが道をやってくる [レイ・ブラッドベリ著]


ハロウィーンの10月。小さな町にやって来た奇妙なカーニバル団を巡る、2人の少年と一人の父親の冒険物語。

印象に残る、人生を鋭く切り取った文章が散りばめられていて、ところどころで「詩」ではないかと思った。

物語の始めに少年二人は、避雷針売りと出会う。印象的な出だしなのだけれど、このシーンの前のプロローグでブラッドベリは有名な一文を記している。「そして、彼らが一夜のうちにおとなになり、もはや永久に子供でなくなってしまったのは、その十月の、ある週のことであった」

主人公はジム・ナイトシェイドとウィル・ハロウェイ。そしてウィルの父親。町の図書館の館長でもある。少年たちは14才を目前にしているが、ウィルの父親は54才。人生を始めようとしている少年と人生が終わりにさしかかっている大人が、怪しいカーニバル団との関わりの中で"今を生きる"、ということを考えていく。

もし学生の時に読んだら少年達に感情移入したと思うが、今回はどうしてもウィルの父親に添って読んでしまった。ラスト近くにまた印象に残る文章がある。「死はそれほど重要なことなのだろうか。いや、重要なのは、死の前に起こるすべてのことなのだ。」