2009-05-13

横溝正史探偵小説選 2[横井司叢書監修]


横溝正史が少年雑誌、少女雑誌に書いた探偵冒険小説と小文で、単行本未収録のものを中心に集めたアンソロジー。

作品が書かれた時代は戦前、戦中、戦後にわたっていて、舞台が台湾だったり、サーカス団が出てきたり、活動写真の撮影に見せかけた犯罪とか、貴族も登場するし、主人公の少年が警部から頼りにされて一緒に捜査するとか、今の時代にはない設定が多い。

横溝正史にしては謎の解決を端折りすぎ。主人公に魔の手がついそこまで忍び寄ってハラハラさせておいて、次の章では「すべては終わりました。謎はこういうことで、あれから主人公は探偵少年に助けられて、犯人はアメリカへ渡って死んだということです」で終り。

とはいえ、つい夢中になって読んでしまった。本当にハラハラさせられるのだもの。連載当時に読んでいたら、次号発売まで相当イライラしたと思う。

当時にあっても絵空事のお話なのだけれど、21世紀に入った現在、このような設定の探偵冒険小説があったらギャグになってしまう。昔は物事が単純だった。今はリアルを追求しすぎ。

随筆編で、横溝正史が「子供たちに必要なのは夢であり飛躍する心です」と書いている。こういうコワい小説は子供の精神発達によくない影響を与える、なんていう大人がいるが、子供が周囲の大人たちから愛され慈しまれているなら、現実と小説を混同することはないと思う。ゲームにしてもテレビ番組にしても同じことだ。このことは「FBI心理分析官」を読んだから思った。