2012-11-05

のぼうの城 [犬童一心、樋口真嗣監督]


面白い。日本映画、ここまで面白いか。

戦国時代、北条勢を追いつめ天下統一を狙う豊臣秀吉は、部下の石田三成に関東の忍城(おしじょう)の制圧を命じる。しかし、思いのほかしぶとく抵抗を続ける忍城に、三成は水攻めで攻め落とそうとするが....。

水攻めのシーンが津波を連想させるというので、2011年に公開が見合わされた作品。たしかに、水攻めのシーンは津波を連想させる。というかあの津波の映像を見てこのシーンを撮ったのか、と思うほど。しかもスペクタクルな水攻めシーンが前半は秀吉による作戦として、後半には三成の作戦としてそれぞれ登場する。

後半、三成によって水攻めされた忍城の領民が城に押し寄せるシーンがあるのだけれど、それが被災地の避難所そのものだった。

登場人物は、忍城老中の息子、成田長親。野村萬斎が演じている。当て書きしたのか、というほど役と役者がぴったり合っていてびっくり。城を包囲する石田勢の注意をそらすために舟の上で狂言を演じたりするのは、このシーンのために野村萬斎を選んだのかと思った。

映画公開前に原作本が出版されて話題になったのだけれど、イトイさんのツイッターを見ていたら、映画のシナリオが先にあって、小説化されたとのこと。すると、野村萬斎が主役と決めて映画を制作することになったのか。

どの役者もみな素晴らしいのだけれど、主人公の野村萬斎は別として、石田三成を演じた俳優に強い印象を受けた。頭が切れて冷酷そうなのにどこかお人好しで、秀吉好みの愛嬌がある三成を演じている。この役者すごいな、と思ったら上地雄輔だった。

実は平岳大氏のファンなのでこの映画を観たのだけれど、この作品の彼はその魅力がよく発揮されていなかった。次回に期待。

2013年にはいくつか時代劇映画が公開されるそうで、「のぼうの城」はその先陣を切った作品として記録されると思う。

エンドロールに、映画の舞台となった現在の行田市に残る史跡の数々が映し出された。石田堤の跡や、忍城の名が残る小学校、城門の名を留めた交差点、戦死者を弔った寺など。昔からの地名を残すことは、郷土愛を生むと思う。行政の一時の都合で変えてはいけない。