おもしろい!すごく面白い。ものすごくおもしろい!!!
十二代目市川團十郎が、平成19年に青山学院大学の日本文学科客員教授として行った集中講義をまとめたもの。初代から十一代までの團十郎の紹介を軸に、歌舞伎の歴史と歌舞伎の演目について解説している。
この本は本当の日本史を描いている。授業や歴史小説で知る日本史はその時の権力者を中心に構成されているけれど、この本は庶民の視点からの文化の変遷をおしえてくれる。
歌舞伎は、女性による阿国歌舞伎踊りから始まり遊女歌舞伎を経て野郎歌舞伎になったとのこと。女役者は性風俗と同一視されて禁止されたらしい。
歌舞伎のあり方について語っている点について共感した。
"「私たちはここで満足です。これ以上はもういいです」という謙虚な姿勢があれば起こるはすがない事件だと思います。歌舞伎もそういう危険な領域に入っていかないよう気をつけなければなりません。-略-もちろん、ある程度の儲けは必要だけれど、それ以上に欲張らない。そういう芸能であってほしい。決して守りの姿勢に甘んじなくとも、それは可能だと思っております"
日本という国が今後あるべき姿でもあると思う。欲をかいては自滅する、というのは寓話によくあるパターンではないか。歌舞伎が17世紀後半から3世紀半も続いているのは、そういった謙虚を忘れていないからではないかと思う。
この人は役者でありながらも、郷土史家でもある。巻頭の写真ページに子どもの頃の写真があり、ものすごくハンサムな少年でびっくりした。こんど宮尾登美子著「きのね」を読んでみようと思う。