2013-05-06

「お茶事」をしてみませんか-正午から口切まで15のかたち [小沢宗誠著]


茶道の様々な接待について解説している。

読んで勉強になった。今まで茶道は、かしこまって座って出されたお茶を器を吟味してから飲んでかしこまって器を返すものだと思っていた。でもこれを読んで、茶道とはいかに客を"おもてなし"、客がいかにおもてなしを受けるかを学ぶことなのだ、ということがわかった。

「本覚坊遺文」や「利休にたずねよ」を読んで、"お茶"は戦国時代の明日をもしれぬ命同士が対する濃い情の交換の場だったのだ、ということを知ったが、太平の世にあっても"お茶"は人と人との濃い心の交流を演出する場のようだ。

毎月の季節に合わせたもてなしの演出とその作法について解説している。朝ごはんをふるまう"茶"、名水をふるまう"茶"、新米を炊いてもてなす"茶"、夜咄を楽しむ"茶"。しかも、茶室ではなく洋室の椅子とテーブルでもてなす"茶"についても提案している。

お茶の流れがだいたいわかった。お客が揃うまで待合に腰掛けて待ってもらい、主人が迎え、蹲で手を洗い、茶室へご案内。ここで炭を拝見して、懐石料理をふるまう。向付、煮物、焼き物、小吸物、八寸、香の物。その間にお酒も出す。そして湯斗、主菓子。お茶を出す前に主人が茶室のしつらいを変えるので、その間お客にはまた待合に戻ってもらう。お客に茶室に戻ってもらい、濃茶、後炭、薄茶、干菓子でもてなしが終わる。

客をどうやってもてなしたらよいかは頭を悩ますところだし、客としてもいつ暇を告げたらよいか間合いを図るのが厄介だ。でもお茶事の作法を知っていたら、余計な気を回すことなくもてなし、もてなされることができる。

これはハードボイルドの世界だ、と思った。お着物のおばさま方より、袴をはいた男性の方が"茶"の場が引き立つ感じがする。

最後の章で井伊直弼の「茶湯一会集」の紹介をしている。客が帰った後の"独座観念"に感銘を受けた。
今日一期一会省みて、再び帰らざる事を観念し、あるいは独服いたす事、これ一会の極意の習い也。この時寂莫としてうち語らうものとては、釜一口のみにして、ほかに物なし。誠に自得せざれば至り難き境界なり
これだけ感銘を受けたものの、「お茶事」の読み方が、おちゃごと、なのか、おちゃじ、なのかはたまた、おさじ、なのかがわからないままです。

2013-04-09

愛しのローカルごはん旅 もう一杯 [たかぎなおこ著]


エッセイ漫画。読んでて楽しい。

神奈川、長野、茨城・福島、滋賀、宮崎・鹿児島、高知、台湾へのグルメ旅行を語っている。たかぎさんは私の地元も旅していて、これが名物料理として知られているんだ、という発見もあった。

旅の道連れは担当編集者だったり、家族だったり、友人だったり。作者と道連れとの関係もコミカルに描かれている。

写真が殆どなくてイラストで料理を紹介している。すごくリアルに描いている絵ではないけれど食欲をそそられてしまう。

たかぎなおこさんを知らなかったけれど、他の作品も読んでみようと思った。読んでいて明るい気分になれる。

2013-04-04

マリーゴールド・ホテルで会いましょう [ジョン・マッデン監督]


じんわり幸せと一抹の寂しさを感じる作品。

インドに長期滞在して余生を過ごそうとするイギリス人たちの話。夫を亡くした専業主婦、退職した公務員夫婦、退職した法律家、退職したメイド、いまだに玉の輿を狙う大年増、実年齢をかえりみないプレイボーイ。

広告に魅せられてやってきたホテルは老朽著しく、若いインド人オーナーは経営の素人。しかもここはインド!というわけで登場人物たちは色々なストレスに晒されるが、やがて居場所と友を見い出して、再び生きることに前向きになっていく。

トム・ウィルキンソンが退職した法律家を演じている。法律家はインドに暮らしていた子ども時代の親友(?)探しに奔走し、探していた友を見つけ出す。彼をずっと忘れずにいた友との再会の夜が明けた朝......。このエピソードが一番印象深かった。

それからジュディ・デンチのファッションの素敵なこと。首に巻くロングスカーフ、ロングチュニックとパンツの様々な組み合わせがオシャレ。活動的だけれどシック。

年をとることがこわい。死にどんどん近づいていることがわかるから。でも最後の最後まで前向きに生きることはできるし、健康であれば年齢にこだわらず自分が生きたいように生きていいんだ、と思わされた。とにかく、体力と筋肉の貯金をしなければ、と思う。

イギリス、アメリカそしてアラブ首長国連邦の合同製作。第2作が製作されるらしい。

2013-04-03

レ・ミゼラブル [トム・フーパー監督]


世紀の大作の一つだ。

人間の醜さ、優しさ、不幸と幸福が凝縮されている世界だ。特に人を貶めようとする力の強さに圧倒される。それに屈することなく前向きに生きていく人間の崇高さがその人を神に近づけていくのか。ラストシーンは涙が止まらなかった。

革命を目指す学生たちの活動を見ていて、アラブの春に通じている、と思った。

舞台のミュージカルがそのまま豪華でリアルなセットとともに映画になった感じ。出演者全員が歌がうまいのでびっくりした。

アン・ハサウェイは全編158分のうちたった15分しか出演していないらしいが、第85回アカデミー賞を助演女優賞を受賞した。

2013-03-31

いちばんやさしい!いちばんおいしい!ケーク・サレ&パウンドケーキ


塩味ケーキのケーク・サレとパウンドケーキのレシピ集。ケーク・サレはまだ作っていないけれど、キッシュをパウンドケーキにしたもののような気がする。

試してみたいパウンドケーキのレシピがいくつかあった。桃と紅茶のパウンドケーキを作ってみたが、桃が崩れてしまい、掲載写真のように出来上がらなかった。コーヒーとマシュマロのパウンドケーキにもそそられるものがある。パウンドケーキにマシュマロを混ぜるという発想が斬新。

色々なレシピがあるけれど、結局作り慣れている自分のレシピで作ってしまうものです。焼き途中で切れ目を入れるという方法を学ぶことができたのはよかった。

2013-03-23

ゼロ・ダーク・サーティ [キャサリン・ビグロウ監督]


2001年9月11日の同時多発テロから2011年5月にオサマ・ビン・ラディン暗殺されるまでの、CIAの捜査を描いた作品。

これは、「裏切りのサーカス」や「アルゴ」や「007」に連なるスパイ映画の一つなのかもしれないけれど、観ていて、本当の主題は組織の中で働く女性なのではないか、と思った。

オサマ・ビン・ラディンの居所を突き止めるための捜査にマヤという女性捜査員が加わる。男性捜査員は捕らえたアルカイダメンバーを拷問して情報を引き出そうとするが、マヤは証言や盗聴会話からオサマ・ビン・ラディンにつながるアルカイダの重要人物を特定し、その居所に迫っていく。彼女の信念が組織を動かし、ついに大統領はオサマ・ビン・ラディンが潜伏していると見られるパキスタンへ軍を派遣する決定を下す。

主役のマヤを演じたジェシカ・チャスティンがインタビューで、自分はこれまで誰かの恋人か妻を演じることが多かったが、この役はこれまでと全く異なる、諜報の最前線で仕事をする自立した女性だった。女優としてそういう女性を演じることができてよかった、と言っていた。

たぶん20世紀ほど女性が職場で格下に見られることは少なくなってきていると思うが、それでもマヤの上司や同僚とのやりとりを見ていて、それはある、と思う場面がいくつもあった。上司からやんわりと提案を却下された時の彼女の台詞に痺れた。「その判断のせいでビン・ラディンを逃がした、という汚名を着ることになってもいいんですか」

ビン・ラディン殺害のシーンは衝撃的。キャサリン・ビグローの前作「ハート・ロッカー」ほどではないけれど、ドキュメンタリータッチに撮影されている。つまり、演出は中立的で、観客の判断に委ねている感じ。

この映画には主人公のマヤだけでなく、CIAの第一線で働く女性が何人も登場する。恋人や妻としてではなく、社会の構成要員としての女性がよく描かれている。もしかしたら、そういう女性を描くためにこの題材が選ばれたのかもしれない、と思った。

2013-03-22

恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム [ファラー・カーン監督]


やっと!この映画を観ることができた。しかも日本で。

1970年代のボリウッドで、脇役専門の役者が主演女優に恋するが、女優は実はプロデューサーと秘かに結婚していた。しかしプロデューサーは自分の出世のために妻が邪魔になり、火事にみせかけて殺してしまう。そして主人公も巻き添えになり死ぬ。ところが、主人公はすぐに生まれ変わり、映画界の人気スターとなった30年後、前世の記憶が蘇り復讐を誓う。

荒唐無稽すぎるストーリーだ。これに歌とダンスが盛り込まれるのだから、一体話がどう進んでいるのかわからなくなってしまいそうなのだけれど、観客がちゃんと主人公とヒロインに感情移入できるように演出されている。

2007年から2008年にかけてインドを旅していた時、この映画が大ヒット公開中で、どの町に行っても主演のシャー・ルク・カーンのポスターが大きく張り出されていた。シャツの前を開けて"シックスパック"をみせびらかしているポスターが。サウンドトラックも大ヒットで、移動の車内でサウンドトラックを聞きながら英語の部分を一緒に歌ったりした。

あまりに大ヒットしているので映画館で観たかったが、ガイドに、外国人が映画館に入ったら観客が大興奮してパニックになるから行かない方がいい、と言われたので観られなかった。でもサウンドトラックのCDは買って帰ってきた。というか、ツアーグループのメンバーの一人が私に買ってくれた。そのバラナシのCD屋で、ジャケットに写っている主役俳優を指してこの人は誰?、と聞いたら、CD屋は誇らしげに「キング・オブ・ボリウッド、サールー・カーン」と言った。

映画は、本当に荒唐無稽なたわいない話なのだけれど、シャー・ルク・カーンのカッコよさ、楽しい歌とダンス、舞台装置の豪華さでとても楽しめる作品になっている。楽しいインド映画がもっと日本で公開されるといいのに。

2013-03-15

世界にひとつのプレイブック[デビッド・O・ラッセル監督]


冒頭部分を見逃してしまったのだけれど、妻の浮気現場に居合わせてしまい、浮気相手を暴行した罪で服役(?)、精神科に入院した主人公が出所して実家に戻るところから話が始まる。

近所に、若くして未亡人となったやはり情緒不安定の女性がいて、二人が出会ってお互いに相手を受け入れ、ダンスを通して新しい人生を開いていく話。

予告動画によると、監督の息子が情緒不安定でとても荒れていた時期があり、原作を読んで絶対映画化しよう、と思ったとのこと。主人公の父親役のロバート・デニーロが監督の話を聞いて涙ぐんでいた。

人生に暗黒の時期はあるけれど、年頃が近くて気心の合う相手と出逢えれば、だれだって暗黒から抜け出せると思う。個人的にもうこのハッピーエンドに共感できる時期は過ぎてしまった。

若い未亡人を演じたジェニファー・ローレンスが第85回アカデミー賞を主演女優賞を受賞。まだ23才とのこと。

2013-02-11

人にやさしいナチュラルおそうじ [岩尾明子監修]


すごくためになる本。

これまでも掃除の時には合成洗剤を使わないようにしていたのだけれど、この本を読んで自然由来のものを使って掃除をするようになった。特に重曹は必需品になった。

重曹、酢、せっけん、酸素系漂白剤、エッセンシャルオイルの特性などが説明されていて、これらに適した掃除場所と掃除方法が記されている。酢が柔軟剤の代わりになること、重曹を中和することを初めて知った。

これを読んでから、炒め物をした後のフライパンに重曹を振りかけ水を張っておくようにした。洗剤やクレンザーを使わなくてもタワシでこするだけで簡単に焦げ付きが取れる。それから汚れた三角コーナーに重曹を振りかけて一晩置いて翌朝タワシでこするとビックリするくらいピカピカになる。

酸素系漂白剤も使い勝手がいいので、遠慮なくいろいろなものを漂白するようになった。

ティーツリーのエッセンシャルオイルとビネガー水を混ぜたものをスプレーしておくとゴキブリ対策になるとのこと。これは夏に絶対実践したい。

おでかけ七緒 着物好きに。「京都」買いもの図鑑 [プレジデントムック 七緒別冊]


京都の着物関連のお店紹介の雑誌。長襦袢、染め帯揚げ、桐箱、リサイクル着物、着物小物、がま口などなど、京都の有名で(おそらく)良心的なお店を紹介している。

長襦袢と染め帯揚げは記者の体験レポートが掲載されていて、それを読むと京都の老舗は本当は敷居が低いのかな、と思わされる。たぶん今は着物人口が減っているから、真の着物好きだとわかればお店も真摯に応対してくれるのかもしれない。

生地から染め色からすべて自分で決めて注文できるのは贅沢なようだけれど、本来の着物の誂え方なのだと思う。しかし既製品しか知らない自分は、完成品をあてて良し悪しを決めることに慣らされているから、本当に自分が買う実物を見ないで注文するのが怖い。すべて自分が決めるのだから気に入らないわけがないけれど、出来上がりと想像が異なって不満を持つようにならないだろうか。

また京都に行きたくなってしまった。長襦袢は無理としても、染め帯揚げは誂えてみたい。