かわいらしい絵から想像していたのと違って、骨太の青春群像ドラマだった。全10巻を一気読みした。
築28年家賃3万4千円のアパートに暮らす美大生3人を軸に、同級生、下級生、教員、バイト先のワケあり美女、就職先の社会人などなど大勢の登場人物が入り乱れての6年間のドラマ。
メインとなっているのは竹本君と彼が一目惚れするはぐみちゃん。凡才の竹本君に対してはぐみちゃんは天才として注目を浴びている。でもこの作品が描いているのは、凡才であれ天才であれ、現状に行き詰まり、落ち込み、壁を破って新たな一歩を踏み出す登場人物たち全員の心の過程。それぞれがそれぞれの物語を持ち、それぞれのやり方で乗り越えて行く。
一人一人が自分の問題を一人きりで抱えて葛藤しているのだけれど、仲間と過ごす時間があることで、励まされたり、癒されたり、気付かされたりしている。6年間、毎日のように会い、共に時間を過ごすことの素晴らしさ。大学の老先生たちが、青春じゃのう、と目をウルウルさせているカットが何回も出てくるのだけれど、老先生方の包容力も登場人物たちを育てていると思う。
この作品は、掲載誌が2誌も休刊になり、3誌にわたって連載が続けられたとのこと。編集者、読者を魅了した物語を紡ぎ出した作者に脱帽だ。
消えて行ってしまうものは
無かったものと同じなのかって.....
今ならわかる
意味はある
あったんだよ
ここに