映画「ステキな金縛り」のメイキング本。
企画、ロケハン、キャスティング、撮影、編集の段階毎の三谷氏の感想と関係者のコメントが並んでいる。製作裏話満載、の本。
自分が思い描いていることの実現に、他人が力を貸してくれて、本当に形にしてしまうのは、人生の醍醐味だろうと思う。
三谷氏は決して妥協することなく、自分のイメージを追求している。強い精神力だ。周囲のちょっとやる気ない顔を見ただけで「じゃ、いいや」と折れてしまうような、ぐらぐらした個性(それは自分なのだけれど)では何事も成し遂げられないはずだ。
読んでいて、これは伊丹十三監督を意識して編集されているのではないか、と思った。「マルサの女日記」と形式は違うけれど、映画製作の関係者の話を集めて、三谷監督がどれほど映画製作に心血を注いでいるか、をアピールしている。三谷氏本人が書いたのではなく、実際には編集者、というか構成の方が"書いている"から自己顕示的なイヤミは感じられないけれど、それでも伊丹氏を意識しており、あわよくば凌ごう、としているような気負いが感じられる。その気負いは三谷氏本人から出ているものではないけれど。
「ステキな金縛り」を観た後でもやはり、私にとってのベスト三谷作品は「マジック・アワー」です。